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経営方針

平井一夫 社長 兼 CEOからのメッセージ

2014年度 経営方針説明会

2年間の業績と当年度の見通し



2013年度および2014年度の業績についての反省
先週の決算発表でご説明した通り、2013年度は大きな最終損失を計上しました。また、2014年度についても、主にエレクトロニクス事業の回復遅れにより中期目標には遠く及ばず、徹底した構造改革を進めることもあり、500億円の最終損失となる見込みです。
私は社長就任時に「エレクトロニクス事業の再生」を最重要課題と位置づけ、様々な施策に取り組んできました。エンタテインメント事業、金融事業が想定を上回る成果をあげたのに対し、エレクトロニクス事業のターンアラウンドを達成することができず、忸怩たる思いです。特に2年続けて最終損益が赤字となることは、大変重く、株主の皆様を始め多くのステークホルダーの方々の期待に応えられなかったことは、大変申し訳なく思います。

この2年間を振り返ると、我々がコアと定めた事業においては、成長のドライバーになり得る製品も出てきており業績面でも改善は大きいものの、赤字事業がこれを打ち消し、全体として収益改善が想定通りに進みませんでした。変化が激しく、厳しい競争環境の中で戦っていることは間違いありませんが、我々の環境変化への対応力とスピードが不足していた、変化への「打ち手」が遅れた、と言わざるを得ません。
2014年度は「構造改革をやり切る年」
2014年度は社長就任時に掲げた3か年計画の最終年にあたりますが、私自身、次の2015年度からの3年間を成長フェーズに移行し、持続的に収益をあげられる企業へ変容するためにも、今年度を「構造改革をやり切る年」と位置づけ、徹底した「変革」に取り組んで参ります。

度重なる業績の下方修正や赤字を継続する体質を変えます。何年続けて構造改革をやっているのか、というご批判については、真摯に受け止め、今年は確実に構造改革をやりきる、来年以降に先送りしない、という強い危機感と決意を持ってのぞみます。

本日は、「エレクトロニクスの事業構造の改革」「2014年度の注力事業における重点施策」「2015年度以降の成長に向けた技術開発の方向性と新規事業創出への取り組み」についてお話しさせていただきます。

エレクトロニクスの事業構造の改革



それでは、エレクトロニクスの事業構造の改革についてお話しします。
まず着手したのが、2月に発表したPC事業とテレビ事業の抜本的な変革プランです。

VAIOは我々にとって、さまざまなチャレンジを行ってきた重要な事業であり、大切なブランドでもありました。しかしながら、ここ2年間の大幅な赤字と、市場の変化を踏まえ、大変厳しい判断ではありましたが、PC事業を収束することを決断しました。
先日発表しましたように、日本を中心とした一部の事業については、7月1日を目途に、日本産業パートナーズ株式会社と、同社が設立する新会社「VAIO株式会社」に事業を譲渡するための正式契約を締結しました。「VAIO株式会社」において、VAIO PC事業が再生し、VAIOをご愛顧いただいているお客様の期待に応えてくれることを心から願います。我々としても、これまで商品をご購入いただいたお客様に対するアフターサービスを継続するなど、事業移行がスムーズに進むようにサポートをしていきたいと思っています。
テレビ事業につきましては、7月1日を目途とした新会社発足に向けた準備を着実に進めています。新会社は「ソニービジュアルプロダクツ株式会社」といい、TV事業のValue Chain全体について責任と権限を持ちます。昨年度は、目標としていた黒字化を達成することができず、10年連続の赤字を計上することとなりました。この事実は私自身、大変重く受け止めています。2年半前に発表した収益改善プランに基づき、それまでの数量拡大政策を抜本的に見直し、パネル調達コストの大幅削減、設計・開発の固定費削減などを進めてきました。更に、昨年は、4Kモデルに代表される高付加価値商品へのシフトも進み、お客様からもソニーらしい商品が出てきたという評価も頂きました。しかし、それでも、黒字化は達成できませんでした。この原因については、現象面では、新興国市場の成長鈍化や為替の悪影響といったことが挙げられますが、私自身は、結局そういった外部環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できるだけの体質に、未だ我々自身が成りきれていなかったと分析しています。新会社にはテレビ事業を行う上で必要不可欠な機能を移管し、同時に、テレビ事業を支える販売会社と本社間接部門の構造改革を推し進めます。そして固定費の削減を着実に実施し、外部環境の変化による影響を最小化できる事業構造を構築します。新会社の経営には、引き続き今村を中心としたチームが就任し、継続性・一貫性があるコスト改善活動と4Kを含む高付加価値化戦略を推し進めるとともに、スピーディーで、フレキシブルなオペレーションを確立します。
足元の事業状況も鑑みて、テレビ事業の今期黒字化は達成可能と見込んでいます。1600万台という年間販売台数見込みについて強すぎるのではないかというご懸念があることも認識していますが、仮に、台数減少のリスクが顕在化した場合でも、現在のテレビのマネジメントには、これまでの改革を通じて、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応し、損益インパクトを最小化する力が備わってきたと考えています。更に、損益面での安定を確実なものするため、想定外の事象が起きた際の対応策も並行して準備してまいります。

次にテレビやPCの変革にも直結している、販売会社と本社の構造改革です。先週の決算発表で吉田からも説明させて頂きましたように、今期中に、この領域での固定費削減をやりきり、2015年度には、2013年度比で、販売会社全体で20%、本社間接で30%のコスト削減の実現を目指します。
2013年度と2014年度で、エレクトロニクス事業構造の変革のために、合計で3,000億円以上の費用を使う予定です。大変大きな費用を使うことになりますが、この構造改革による効果は、2015年度以降に年間1,000億円以上のコスト削減をもたらすと見込んでいます。2015年度以降に目標とすべき経営指標は、今年度に事業構造の変革を徹底的にやり切った後に、中期的な成長戦略と併せて、皆様にお示しさせて頂きたいと思っていますが、構造改革によるコスト削減効果、PCなどの損失事業の解消、この後説明するエレクトロニクス・コア事業の収益貢献、エンタテインメントや金融の安定的な収益貢献などを併せ、2015年度には、連結営業利益で4,000億円レベルは目指せると考えています。

2014年度の注力事業における重点施策



ここからは、2014年度、各事業で特に重点的に実施していくことをお話させて頂きます。

エンタテインメント・金融事業の位置付けと更なる強化
エレクトロニクス事業の回復が遅れている一方で、エンタテインメントと金融については、グループの業績に、継続的に貢献しています。よく、ソニーに関する表現で「好調なエンタ、金融部門に対し、本業のエレクトロニクスでは・・・」という表現を耳にしますが、私は、これまでも繰り返し申し上げているように、エレクトロニクス、エンタテインメント、金融のどれもがソニーにとって重要なビジネスであり、本業だと考えています。ソニーは、1968年に日本において音楽ビジネスに足を踏み入れ、その約10年後に生命保険ビジネスに参入しました。さらにその10年後、1988年にはCBS Recordsを買収して音楽ビジネスを全世界で事業展開することとなり、翌年にはコロンビア・ピクチャーズを買収し映画ビジネスに参入しました。いずれもソニーにとって四半世紀以上の歴史を持つ事業であり、どの会社も業界で確固たる地位を築いていることは、我々にとって大きな誇りです。
エレクトロニクス事業を再生し、エンタテインメント、金融事業を持続的に成長させていくことが、ソニーグループが未来に向かって成長していくための基本方針であることは、私の社長就任時からの一貫した考えです。

エンタテインメント事業については、昨年11月に投資家やアナリストの皆さまに向けた事業説明会を開催し、一層の収益力の向上に取り組んでいく旨をご説明いたしました。
構造改革については、映画分野において約2億5000万ドルのコスト削減を行うことを昨年発表し、かつ、11月のエンタテインメント事業説明会でもさらなるコスト削減を検討している旨お伝えしておりましたが、その後更に5000万ドルを超える追加のコスト削減の実行を決めました。この結果、2015年度末までに合計3億ドルを超えるコスト削減プランを実行します。このうち、2013年度末までに1億3,000万ドルの削減につながるプランを実施済みです。また、現在公開中の「アメージング・スパイダーマン2」は、既に全世界劇場興行成績6億4千万ドルを突破しております。映画製作事業については、今年度は利益率改善に向けた取り組みを着実に実行することで、前年度比25%の増益を計画しています。注力領域であるメディアネットワーク事業とテレビ番組制作事業では、インドでのネットワークビジネスや米国でケーブルネットワークなどの事業を行っているGame Show Networkを中心に、メディアネットワークは確実に成長しています。また、昨年米国では7本もの新テレビ番組シリーズがパイロット番組の制作なしに受注でき、秋以降放送された全ての新作ドラマの中で当社の「ブラックリスト」が最も高い視聴率を獲得しています。当社制作の多くの新作番組がセカンドシーズンでの放送が決まりましたが、今後もコンテンツ需要の高まりを踏まえ、良質な番組制作を継続することで、事業の拡大と収益アップを図ってまいります。
音楽事業においては、デジタル音楽配信市場の成長が米国を中心に鈍化している一方で、当社においてはサブスクリプション型のサービスが新たな収益源の一つとなりつつあります。そのような中、アーティスト発掘や新興国市場の開拓を通じ、マーケットシェアの拡大に注力していきます。
さて、コンテンツを取り巻く状況としては、ネットワークの規模が大きくなることで「オリジナルの映像コンテンツ」が最初にネット向けに登場するという流れが広がっています。米国の映画・テレビ業界においては、これまでメジャースタジオと結びついた4大ネットワーク、そしてシンジケーションという力が強大で、これらを持たないソニーピクチャーズは、それゆえに利益率が低いのではないか、という指摘もいただいてきました。しかし、ネットワークが「コンテンツの2次利用先」ではなく最初に新規コンテンツを流すチャンネルになっていく中、今後は巨大なネットワークテレビ局を持たない、アセットを持たない強みが、新たな事業展開においては活かせると考えています。ソニー自身もMusic Unlimited、Video Unlimitedなどネットワークサービスを手掛けていますが、NetflixやAmazonなど多様なコンテンツ配信事業者が市場での存在感を増しています。クリエイターの観点からみれば、自らのコンテンツがダイレクトに配信されるチャンネルが増えるというのは、非常に喜ばしいことです。魅力あるコンテンツの価値は上昇しており、ソニーを含むコンテンツホルダーや製作事業者にとってポジティブな状況です。また、コンテンツ配信のあり方もこれまでのダウンロード中心からストリーミングへの移行が強まるなど、業界を取り巻く環境が大きく変化しています。
こうした状況の中、ソニーグループはコンテンツ領域で大変優れた人材と資産を有しています。実際に、ケーブルテレビ発のドラマ「ブレイキング・バッド」は大ヒットし、昨年はエミー賞ドラマ部門で作品賞も受賞。全世界の視聴者にご覧いただいています。また、ソニーミュージックの所属アーティストであるダフト・パンクは、グラミー賞において最優秀アルバム賞を含む、5冠を達成しました。ソニーが有する豊富なコンテンツ資産とコンテンツ制作の力が、新しい時代に新たな強みを発揮できる状況にあると考えています。
ネットワーク事業との協業も含めて、引き続きエンタテインメント事業のイノベーションに取り組んでまいります。
金融事業についても、生命保険にライフプランナーという新しい考え方を導入したことに代表されるように、商品の差異化が難しい金融業界において、顧客視点にたったイノベーションを続けていることに、ソニーがこの事業をやっている意義があると考えています。生命・損保・銀行3社の順調な業容拡大を背景に、引き続きお客様に安心してご活用いただける、高品質なサービスの提供により、高い顧客満足度を実現し、そして、これを追求し続けることで安定的な利益成長を目指します。また、昨年参入した介護事業についても4本目の柱として育ててまいります。

エレクトロニクス・コア事業の強化
次にエレクトロニクス事業です。
これまでも繰り返し述べてきたとおり、ソニーがコア事業と定めるモバイル、ゲーム、イメージングの3つの事業領域は、それぞれが大変厳しい競争環境にありますが、ソニーは、この中でイノベーションを起こし、他社にはないユニークな顧客価値を提供することで、勝ち抜くことができると考えています。特に、ソニーが有する二つのキーデバイス、すなわちイメージセンサーとバッテリーの力が、このコア三事業領域を支え、ユニークな顧客価値創造の土台を形成します

PS4とネットワークサービスで新しい事業モデルを確立
まず、ゲーム&ネットワークサービス事業についてご説明します。
今年度は、全世界でPS4™の販売を一層拡大することにより、ホームコンソール市場においてNo.1のポジションを堅持します。PS4は、2013年11月の北米での発売開始から5か月間で、72の国と地域に導入され、4月6日時点で累計700万台の実売を達成しました。このように、垂直立ち上げには成功しましたが、今後、普及率をいかに堅調に伸ばしていくかがプラットフォームの成否の鍵を握っています。PS4専用ソフトウェアにつきましては、4月13日時点で47タイトルのゲームが発売されており、販売店様およびネットワーク経由におけるPlayStation Storeでの累計実売本数もすでに2050万本を超えております。これからもゲーム開発者の皆様の創造力を最大限に引き出すことでゲームプレイの可能性を一層拡げると同時に、ネットワーク上で実現されるソーシャル体験に幅広く対応し、より豊かなゲーム体験を実現してまいります。また、リモートプレイ機能により、PS4の体験をPlayStation Vita上でもお楽しみいただくことができるなど、リビングルーム以外の場所においても、時間や場所を問わず、PS4のゲーム体験が拡がります。PS4は、収益面においても既にハードウエア単体で利益を計上しており、従来のプラットフォームのビジネスとは異なる、事業体質を実現しています。
PS4が実現するネットワーク機能についても日々進化しています。PS4をご購入いただいたお客様の約半数がPlayStationの定額ネットワークサービスであるPlayStation Plusの会員であり、また、PSN及びSony Entertainment Networkのアクティブユーザー数は全世界で5,200万人を超え、多くの皆様にネットワーク経由で提供するゲームや音楽、ビデオを楽しんでいただいています。また、PS4の体験をモバイル機器にもシェアできるスマートフォンやタブレット向けのPlayStation Appのインストール数も現時点で既に450万以上を数え、幅広い支持をいただいています。ゲーム、音楽、ビデオサービス全てを含むネットワーク関連の売上は2013年度に2,000億円を超えており、今後さらに伸ばしてまいります。

さきほど、エンタテインメント事業のところでコンテンツ配信のあり方について、今後はストリーミングへの移行が強まると述べました。ゲームにおいては、コンテンツのデータ形式が映画などのビデオコンテンツとは異なるため、ダウンロード型からストリーミング型へと配信方式を変更するには技術革新が必要でしたが、この夏より、PS3のゲームをストリーミング方式でPS4やPS Vitaに配信するPlayStation Nowのオープンベータサービスを米国にて開始することを皮切りに、ストリーミングによるPlayStationの世界の提供も積極的に行ってまいります。PlayStation Nowは、2014年中に米国にて発売される液晶テレビ「ブラビア」にも対応を予定しており、将来的には様々なネットワーク機器に提供を拡大してまいります。
クラウドベースのサービスを通じて、エンタテインメントに革命を起こすというソニーのネットワークサービスへのビジョンはゲームだけにとどまりません。お客様の嗜好に合わせ、また視聴習慣に適応した、よりパーソナルでダイナミックな、クラウドベースの新しいテレビサービスを年内に米国で導入します。これは、ケーブルテレビでお客様の高い支持を得ている放送番組とデジタルメディアサービスに望まれるダイナミックな視聴体験を組み合わせたものです。本サービスでは、お客様は最も人気のあるテレビ番組と幅広いビデオオンデマンドのコンテンツライブラリーの二つを楽しむことができるため、お気に入りの映画やテレビ番組、スポーツ番組などをすべて一つの場所で視聴することが可能になります。加えて、これらの膨大なコンテンツから、自分が見たいものにいかに簡単にアクセスするか、という点についても徹底的に追求しています。
ソニーは、クラウドベースのテレビの生放送とビデオオンデマンドおよびデジタルビデオレコーダーに保存されたコンテンツをスマートに統合し、時間とデバイスを問わずシームレス且つ簡便にコンテンツへのアクセスを可能にすることで、革新的な体験を提供してまいります。

このようにゲーム及びネットワーク事業においては、安定的な収益を生むプラットフォームビジネスを基盤に、コンテンツやソフトウェア、ネットワークサービス事業を更に充実、拡大することで、より大きな収益源を確保するとともに、お客様に新しい楽しみを提供し続けてまいります。今年はプレイステーションが誕生してから20年目にあたります。これまでのプラットフォームではPS2が収益的にも最も成功したプラットフォームですが、PS4はハード、ソフト、サービスが一体となり、それ以上の利益を生むプラットフォームに育つ可能性をもっていると考えています。
モバイル‐堅実な事業の拡大とvolatilityマネジメントの徹底
次に、モバイル事業についてご説明します。
2013年度は、業界最高のカメラ技術などソニーグループの技術資産を結集したXperia™のフラッグシップモデル群を市場に導入し、期初に見込んでいた販売台数には残念ながら届かなかったものの、売上は前年度比で50%以上伸び、収益面では約500億円改善、黒字化を達成しました。

この後述べる施策により、2014年度は更に売上と利益を伸ばす計画ですが、モバイル事業において今年度もっとも大事なことは、事業環境の急激な変化や需要の落ち込みといったリスクにどう対処していくかであると認識しています。全世界のスマートフォンの市場規模は依然として増大している一方で、先進国での市場成長の鈍化やコモディティ化の進行など、スマートフォン事業は、変化が激しくリスクとも背中合せの事業です。モニタリングを徹底し、必要と判断した場合には、柔軟かつ迅速に事業プランの変更が行える体制を整えます。

2014年度の重点施策としては、まずはソニーの技術やアセットをフル活用した、Xperiaのフラッグシップモデルをタイムリーに市場に投入し、プレミアムセグメントでブランド認知度と存在感を確固たるものにしていきます。これはXperiaの当初からの最重要施策ですが、今年度は、同時に、地域ニーズに応じて普及価格帯のモデルラインナップを充実させることで、より多くのお客様にXperiaの楽しさをお届けします。
また、地域別の取り組みとしては、日本・欧州に加え、米国市場での強化に取り組みます、米国市場は大変競争の激しい市場ですが、通信事業者との戦略的なパートナーシップの構築とお客様ニーズに合致した商品の導入を行うことで、ソニーの存在感を増すことができると考えています。
また、ソニーのAVの強みを活かした小型スピーカーやヘッドフォンなど、いわゆるスマートフォンのコンパニオンプロダクツは、スマートフォンの楽しみを広げるだけでなく、携帯電話ショップ自体を楽しくし、お客様の体験と販売の幅を広げることに貢献しています。これらの周辺機器事業は、今後もスマートフォンビジネスの裾野を広げ、事業の安定性を高める一つの軸になると期待しています。
さらに、スマートフォンと組み合わせて使うことで体験を広げるスマートウェア商品群も一層充実させていきます。リストバンド型のスマートバンドは、日常の活動記録を通じて、ユーザーの未来の行動のきっかけになる情報も提供します。スマートウェア商品の開発においても、スマートバンドに続く、ソニーならではの商品提案を行ってまいります。

以上述べてきましたように、モバイル事業については、成長のための施策とリスクコントロールをしっかりマネージしていくことが今年度の最大の課題です。

イメージセンサーの強みをドライバーにデジタルイメージングの世界で確固たるリーディングポジションを
三つ目が、イメージング関連です。
この領域では、ソニーが最先端の技術力と競争力を有しているイメージセンサーと、社内に豊富に蓄積されたカメラ技術を集約し、セットとデバイス双方で、事業の拡大を図ってまいります。イメージセンサーについては、ルネサスエレクトロニクス株式会社より継承した鶴岡工場の半導体製造設備をもとに、新たな生産拠点としてソニーセミコンダクタ・山形テクノロジーセンターを設立しました。この工場では、拡大するモバイル機器市場を中心に、今後更なる需要増加が見込まれる積層型CMOSイメージセンサーを生産し、イメージセンサー領域でのソニーのリーディングポジションを確固たるものにしてまいります。
こうした自社開発のイメージセンサーと、画像処理エンジン、大口径レンズの組み合わせを最大限に生かして、付加価値の高い魅力的な商品を展開していくのが、プロフェッショナル及びコンスーマー向けカメラ事業です。放送局をはじめとするプロフェッショナル領域においては、高い市場シェアを確保している4K対応の業務用カメラを中核として、単品売り切り型のビジネスからソリューション提供へと移行することで、事業の成長を図ります。
コンスーマー向けには、デジタル一眼と高付加価値コンパクトに注力していきます。具体的には、小型のボディに大型イメージセンサーを搭載した「α」でコンパクトフルサイズの市場を創造・成長させると同時に、既にプレミアムの地位を確立している「RX」シリーズを強化することで、市場の変化に強い収益性を確保してまいります。加えて、レンズスタイルカメラやアクションカムのような斬新な商品も投入し、新しい顧客体験や価値の創造にも、さらに力を入れていきます。
センサーとバッテリーでコア事業を支える
社内には「デバイスでソニーを変える」というキーワードがあります。つまり、デバイスを原動力に、ソニーらしい製品、新しいサービスを創出する、ということです。そして、その柱となるのが、イメージセンサーであり、そしてバッテリーです。
2017年には3兆円市場に伸びることが期待されているリチウムイオン電池市場において、ソニーの第一の注力領域はモバイル向けのラミネート型ゲルポリマーバッテリーです。高い柔軟性による薄型化と形状の自由度に加え、安全性、電池寿命の面で高い優位性を活かして、スマートフォン、タブレットなどはもちろんのこと、今後はウェアラブル機器においても強みを発揮できるものと確信しています。
 そして、第2の注力領域である、蓄電システムにおけるオリビン型リン酸鉄リチウムバッテリーは、室内環境であれば20年は使用可能な長寿命と、高い安全性が特長です。現行の公共用途、住宅用途に加え、先月カナダ最大の電力会社・ハイドロケベック社と大規模蓄電システムに関する研究開発の合弁会社設立を発表しました。これをテコに、電力系のインフラビジネスも狙ってまいります。

メディカル事業は着実に進捗
次に、メディカル事業に関してご説明いたします。
メディカル事業は現段階では開発・育成フェーズですが、着実に進捗しています。
オリンパス株式会社との医療事業合弁会社、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズにおいては、3D、4Kの技術を活用した外科用硬性内視鏡の開発が順調に進んでおり、2015年度には予定通り最初の商品を市場導入できると見込んでいます。開発ステージが進むにつれ、ソニー、オリンパス両社共に確かな手ごたえを実感しており、今後の市場導入に向けて両社からの人員の補強も行っています。
また、病院内のシステムインテグレーションの導入実績も出てきています。ここでもソニーが持つ映像技術やノウハウにより、システム開発や調整のスピートが大幅に改善されるなど、具体的成果もあがっています。
メディカル事業については、2020年度に売り上げ約2000億円という目標を出していますが、ソニーの医療事業が、世の中の人々にとっても欠かすことのできない存在になることを目指しています。

ここで、ソニーのエレクトロニクスの根幹を支える技術と技術開発の方向性について、少しお話させて頂きたいと思います。構造改革をやり切った後にエレクトロニクス事業を成長させるためには、何と言っても技術力においてソニーがリードし続けていかねばなりません。ソニーの中には沢山の将来の可能性を秘めた技術の種がありますが、この中から本当に中長期にわたり競争力を維持し、事業の差異化に繋がるものを選択し、そこに経営資源を集中していきます。本日は、R&Dとデバイス事業の担当執行役である鈴木智行から、お話させて頂きます。

技術開発の方向性と新規事業への取り組み



技術でライフスタイルを変える

エレクトロニクスの研究開発の方向性について、ご説明致します。

ソニーは創業時より、常に技術の先進性を追求し、ホームやモバイルで、お客様に感動を与える商品・サービスを提供し続けてきました。人々のライフスタイルを変えるようなイノベーションを引き起こすことが、ソニーの技術者のDNAであり、使命です。

ソニーは、機器のネットワーク化やクラウドとの連携によって、新しい体験や経験を生み出すことができると考えています。
「ホーム」においては、家庭やコミュニティの空間で、いつでもどこでも自由に映像や音楽を楽しみ、必要な情報にアクセスできる「ライフスペースUX」。
「モバイル」においてはいつも身に着けていて、様々なセンサーで行動のログを記録したり、メガネ式のディスプレイによって、必要な情報を表示したりすることができる「ウェアラブル」。この「ライフスペースUX」と「ウェアラブル」によって新たなライフスタイルを提供します。
技術領域は、デバイス技術と情報処理技術に大別されます。ソニーの強みは、デバイス技術としては、イメージセンサー技術、バッテリー技術、及び、低消費電力技術です。そして情報処理技術としては、認識技術とナチュラルUI技術、及び信号処理技術です。これらの技術群は、我々がコアと定めている3つの事業、ゲーム&ネットワークサービス・モバイル・イメージング事業の差異化に欠かせないものであると同時に、それぞれの技術が進化していくことで、新規事業の創造に繋がります。
まず、イメージセンサー技術です。ソニーは、CMOSイメージセンサーに独創的な裏面照射型や積層の技術を投入し、いつも世界の最先端を走り続けてきました。今後は、静止画はもとより動画性能も追求してまいります。まず、デジタル一眼カメラ「α7S」でISO40万を超える超高感度を実現しました。また、臨場感あふれるスーパースローモーションを実現するために、毎秒1000枚の超高速撮影を可能にします。
更に、α6000ではイメージセンサーの像面にAF(オートフォーカス)センサーを配置することによって世界最速0.06秒のオートフォーカスを実現しました。ソニーは、この構造、像面位相差オートフォーカスセンサー構造を画像の奥行を測定するDepthセンシングに応用していきます。
次に情報処理技術、特に、認識技術です。 物体や顔を認識する技術は、デジタルイメージングの世界で、スマイルシャッター、オートフォーカス機能、そしてPS4の顔ログインへと進化しました。これらに高度な信号処理技術を組み合わせることで、拡張現実、すなわちAR技術を実現しました。
AR技術によって、ディスプレイ上でリアルな映像とCG映像を重ね合わせたり、実風景の上に文字情報などを表示することができます。
また、「ライフスペースUX」においても、この認識技術を、Depthセンシングと組み合わせ、空間をスマートフォン画面のタッチパネルのように扱ったり、人間のジェスチャーを入力コマンドに使用したりすることが可能になります。 このようなナチュラルUIの実現によって、新しいエンタテインメントの空間を提供できると考えています。

最後に、バッテリー技術と低消費電力技術です。
ウェアラブル端末は、さまざまな入出力処理や演算機能が動作し、生体の情報をセンシングすると同時に、クラウドと連携するので低消費電力化が不可欠です。
ソニーには、ウォークマンやハンディカム等で培ってきた、統合電力マネジメント技術、いわゆるスタミナ技術の強みがあります。
さらにGPS受信LSI用に使われている低消費電力回路技術があります。
これらの低消費電力技術を、ソニー独自のラミネート型ゲルポリマーバッテリーと組み合わせることで、長時間使用が可能なウェアラブル端末を実現することができます。
これからも、我々は、創業者の井深・盛田の時代から脈々と培われてきた「ライフスタイルを変える」「人々の生活をより豊かにする」ことを使命に、新しい技術開発にチャレンジして参ります。今後も、ソニーから提供される商品・サービスに、是非、ご期待ください。
私もこれまで厚木をはじめとする技術の現場には何度も足を運んでいますが、毎回新たな発見があり、有意義な議論をエンジニアたちとできることを楽しみにしています。
イノベーションの促進と新規事業の創出
最後に、新規製品と新規事業創出の取り組みについても簡単にご説明いたします。
昨年の経営方針説明会でもお話しましたが、私は社長就任以来、世界各地のソニーグループの拠点を訪れ、そこで社員が持っている新しい商品や新規事業の創造への意欲を実感し、実力と意欲をもった社員にチャレンジする場を与えることを推進してきました。既存の事業部門に対しても、ビジネス規模としては当初はニッチであっても、イノベーションがあり将来大きな可能性を秘めているものは、積極的にチャレンジすることを推奨し、この結果、昨年度はレンズスタイルカメラやミュージックビデオレコーダーなど、新しい顧客体験を提案し、お客様からも「ソニーらしい」というご評価を頂いた商品を市場に導入することができました。
また、既存の事業の枠を超えた新規商品や事業を創造するための専門組織も設置し、そこで、ライフスペースUXという空間を利用した新しいコンセプトの最初の商品となる4K超短焦点プロジェクターやスマートテニスセンサーなどの商品を開発し、市場導入を決定しました。
そして、今年4月には、社内にある潜在的な技術やコンセプトの種を掘り起し、プロジェクトのレビューを体系的に行い、事業化につなげるための専門組織も設置しました。事業そのものの創出を仕掛けると同時に、それに取り組む挑戦意欲の高い若手人材の育成も重要な目的と考えています。8月に営業を開始する予定のソニー不動産もこの取組みの一つという位置づけです。このような動きが、新しいソニーの原動力となって、将来的に事業の柱になるものがいくつも育っていくことを期待しています。

新しいソニーの創造に向けて



さて、本日は、ソニーが高収益体質の企業に変容するために、ソニーとして取り組むべきこと、そして、2014年度に特に注力することを中心にお話してまいりました。経営方針説明会としては異例かもしれませんが、冒頭に申し述べました通り、今年度にやるべきことをやりきり、結果を出さなければ中長期の成長戦略は描くことはできないと考えています。
繰り返しになりますが、2014年度は、私自身の責任として、2015年度以降の成長のために、エレクトロニクス事業の構造改革をやりきります。構造改革は先送りしません。
そして、2015年度以降の成長のために、エンタテインメント及び金融事業の収益基盤を一層強化するとともに、エレクトロニクスのコア3事業のトランスフォーメーション施策を確実に実施します。具体的には、本日述べましたように、イメージング関連については、高付加価値モデルへのシフトを着実に進めるとともにイメージセンサーの供給基盤を一層強化します。モバイルについては、地域・ラインアップでの面展開を行うと共に、コモディティ化に伴う事業変動リスクを確実にマネージする体制を構築します。そして、ゲーム&ネットワークサービスについては、2015年度以降の収益の拡大に向けて、PS4のインストールベースを拡大し、ネットワーク事業を強化します。

ソニーがお客様に驚きと感動を提供し続けるために
私は、創業以来受けつがれている自由闊達な社風や、「人のやらないことをやる」というソニースピリッツは、ソニーの不変のDNAとしていつまでも持ち続けなくてはいけない一方で、時代に即して変えるべきものについては、変化をおそれていてはいけないと思っています。
ソニーは変革を成し遂げ、お客様にとって真に魅力的な価値と、世界に先駆けた新しい商品やサービスを生み出していきます。
ソニーの商品に触れたとき、音を聴いたとき、映像をみたときに、驚きと感動をお客様にもたらす。この思いを、世界中のソニーグループ社員が共有しています。

大変厳しい試練の時であり、社員にも苦痛や負担を強いる施策を実施していかなければなりませんが、2014年度は構造改革をやり切り、投資やチャレンジを可能にする財務体質に戻すことに徹底的に取り組んでまいります。これをやり切った時に、驚きと感動をお客様にもたらす新しいソニーの創造に向けた道が開かれると確信しています。
2014年5月22日
代表執行役 社長 兼 CEO
平井 一夫
  • 平井 一夫
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