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積層型多機能CMOSイメージセンサーを支える代表的なソニー発明について

  • ソニー株式会社
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

この度、ソニーグループの社員である梅林 拓に対し、令和2年春の褒章において紫綬褒章が授与されました。紫綬褒章は科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方に対して授与されるもので、この度の受章は積層型多機能CMOSイメージセンサー構造の開発に関する業績が評価されたものです。なお、本開発では平成28年度の全国発明表彰(主催:公益社団法人発明協会)において「内閣総理大臣賞」を受賞しており、その後の発明協会推薦により、平成30年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)も授与されています。また、発明協会からは今回の紫綬褒章への推薦をいただいています。

以下に、積層型多機能CMOSイメージセンサー及び、当該製品を支えるソニーの代表的な発明を紹介します。

1. 積層型CMOSイメージセンサーとは

電子の眼とも呼ばれるCMOSイメージセンサーは光を電子情報に変換する半導体基幹部品である。身近なところではスマートフォンのカメラで多く使われているが、それ以外でも監視向け、車の自動運転向け、工場自動化などの産業向け、医療用など様々な場所で基幹部品として使われるようになってきている。このような多種多様な用途に応じて、求められる機能や仕様も多岐にわたる。従来のCMOSイメージセンサーは、光電変換を行う画素部と信号処理回路部を1枚の同じシリコン基板上に構成していた為、多機能化による回路規模の増加と構造の小型化は両立できないという問題があった。
この問題を克服するため、画素部と信号処理回路部をそれぞれ別々の2枚のシリコン基板に形成し、2枚を高精度に位置合わせをして貼り合わせた後、両シリコン基板を多点で電気的に接続させるという手法を発案した(特許第5773379号 梅林 拓、高橋 洋、庄子 礼二郎)。これにより、画素部の直下に広い信号処理領域を確保する事ができ、従来使われていた裏面照射型CMOSイメージセンサーという高画質な基本性能を損なわずに、小型化と多機能化を同時に実現する事が出来るようになった。「1階建て」のシリコン半導体素子を「2階建て」にしたのである。この技術は、積層型多機能CMOSイメージセンサーとして、世界で初めて量産され商品化された。近年のスマートフォンのカメラは様々な撮像シーンに対応し、画質だけでなく、機能性や操作性においても飛躍的な進歩を遂げており、この技術による恩恵が大きいと言っても過言ではない。最近では、スマートフォンだけではなく、様々な電子機器で使われるデジタルカメラとして、この技術を活かした多くの製品が生み出されるようになっている。

2. 積層型CMOSイメージセンサーを支える代表的なソニー発明

積層型CMOSイメージセンサーに採用されたCu-Cu接続

ソニーは、画素チップと論理回路チップをそれぞれの積層面に形成したCu端子で直接接続する技術を開発した(上記特許に開示)。これにより画素チップを貫通する接続部を設ける必要がなく、接続の専用領域が不要となるため、イメージセンサーのさらなる小型化と生産性向上が可能となる。この技術がもたらす端子配置の自由度向上と高密度化は、今後の積層型CMOSイメージセンサーの高機能化に貢献する。

積層型において、信号処理部との積層に適した裏面照射型CMOSイメージセンサー

裏面照射型では、シリコン基板を反転させた面(裏面側)から光を照射させることで、配線やトランジスタの影響を受けることなく単位画素に入る光の量を増大させるとともに、光の入射角変化に対する感度低下を抑えることが可能となる。しかしながら、裏面照射型では通常の表面照射型と比較して、その構造や工程に起因したノイズ、暗電流、欠陥画素、混色など、イメージセンサーの画質低下につながる課題が発生し、SN比を低下させてしまう。
そのため、ソニーは、裏面照射型に最適化した独自のフォトダイオード構造を発明した(特許第3759435号 鈴木 亮司、馬渕 圭司、森 智則)。それにより、感度の改善およびノイズ、暗電流、欠陥画素を低減し、暗時ランダムノイズの改善を実現した。また、高精度アライメント技術により、混色の課題も克服した。

裏面照射型CMOSイメージセンサーに採用されたPinned Photodiode

ソニーのイメージセンサーの発明の歴史は、古くはCCDの時代までさかのぼる。中でもPinned Photodiodeは、裏面照射型CMOSセンサーの性能向上にも貢献する技術であり、その発明と製品開発の歴史を紐解く。
ソニーは1975年、裏面照射型のN+NP+N接合型とN+NP+NP接合型のPinned Photodiode(PPD)を採用したCCDイメージセンサーを発明した(出願特許1975-127646,1975-127647 萩原 良昭)。同年、その構造をヒントに、VOD(縦型オーバーフロードレイン)機能を持つ、PNP接合型PPDを発明した(特許第1215101号 萩原 良昭)。ソニーはその後、イオン打ち込み技術により濃いP+のチャンネルストップ領域をその受光部近傍に形成したPNP接合型のPPD技術を採用したフレームトランスファー型CCDイメージセンサーの原理試作に世界で初めて成功し、1978年のSSDM1978の学会で論文を発表した(Y. Hagiwara, M. Abe, and C. Okada, “A 380H x 488V CCD imager with narrow channel transfer gates”, Proc. The 10th Conference on Solid State Devices, Tokyo, (1978))。1980年にはソニーはこのPNP接合型PPD を採用したワンチップのフレームトランスファーCCDイメージセンサーを使ったカメラ一体型VTRの試作に成功し、東京では当時社長の岩間が、ニューヨークでは会長の盛田が同日記者会見をして世界を驚かせた。1987年にはソニーは、VOD(縦型オーバーフロードレイン)機能を持つ「イオン打ち込み技術により濃いP+のチャンネルストップ領域をその受光部近傍に形成したPPD」をインターライン転送型CCDイメージセンサーに世界で初めて採用した8ミリビデオのカムコーダーの開発に成功しビデオカメラの市場を開拓した。
このような長い歴史を経て育まれてきたPPDの技術が今も裏面照射型CMOSイメージセンサーに採用されている。

3. 今後の展望

積層型CMOSイメージセンサーは、従来とは全く異なる新たな機能をCMOSイメージセンサー自身に付加することを可能にし、イメージセンサー市場を飛躍的に拡大させることに貢献した。その結果、イメージセンサー量産用設備の国内投資を促進させ、日本の半導体産業を活性化させた。IoT及びAI時代の到来を迎え、積層型多機能CMOSイメージセンサーは、新しい時代を支える撮像デバイスのプラットフォームとしての役割を担い、この技術を搭載した多くの製品により生活をより豊かにし、利便性を向上させ、社会インフラの発展、向上に大きく貢献することが期待されている。