仕上げ磨き専用ハブラシ Possi

世界観を創り上げる、
クリエイティブの力

「家族みんなをハッピーにするために、子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変える」というコンセプトから生まれた、
ブラシを歯に当てると音楽が聴こえる仕上げ磨き専用ハブラシPossi(ポッシ)。そんなPossiのデザインを手がけ、
子どもたちにとって「仲良しの生きもの」という世界観を創り出した
クリエイティブチームが今回のプロジェクトを振り返ります。

ドローイングアンド
マニュアル株式会社
プロデューサー 森口

ソニー
クリエイティブセンター
デザイナー 鈴木

ドローイングアンド
マニュアル株式会社
デザイナー 鈴木

ドローイングアンド
マニュアル株式会社
ディレクター 清水

ソニー
クリエイティブセンター
シニアアートディレクター 城ヶ野

ソニー
クリエイティブセンター
シニアアートディレクター 細田

※ 取材時2019年10月時点

デザインとは、
使う人の生活を変えること

Possiは、京セラ株式会社とライオン株式会社がSony Startup Acceleration Programを通じて開発されていたもの。その発案者である京セラの開発プロジェクトリーダーの強い要望で、Possiのデザインがソニー株式会社クリエイティブセンターに依頼された。

※ スタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム

細田僕はプロダクトをデザインするとき、それを使う人の生活をいかに良くするかということを考えるのですが、Possiでは「家族みんながハッピーになれるもの」にしたいと思いました。子育てはすばらしい体験ですが、当然疲れることもある。子どもが嫌がる歯磨きを負担に思う親御さんも少なくないでしょう。でも、家族で過ごす時間はなるべく笑顔でいてほしい。そう考えるうち、Possiを「仲良しの生きもの」のような存在にすれば、歯磨きを遊びに変えられるのではと思いました。そうして、ブラシをしっぽに見立てた生きもののようなデザインをつくっていきました。

城ヶ野私はコミュニケーションデザインを担当したのですが、細田から「子どもはハブラシと聞くと嫌がるから、可愛い生きものような存在や世界観にしたい」と相談されたとき、私にも幼い子どもがいることから、その考えに強く共感しました。しかし、その世界観をどうやって築き、他のメンバーやユーザーに伝えていくのか。まず取り組んだのが、Possiという生きものを主人公にした絵本づくりでした。音楽を鳴らすという商品特性から「Possiが歌をうたうと、普段はいじわるなバムシー(虫歯菌)たちも一緒に踊って仲良くなる」というストーリーを考え、勢いにまかせて1日で描き上げました。

「仲良しの生きもの」という世界観を描いた絵本

細田その絵本を見せてもらったとき、表紙と中身をチラッと見ただけで「これだ!」と直感的に思いました。そして、京セラやライオンのメンバーにPossiのプロダクトデザインを提案する際、この絵本も見せて僕たちの想いを伝えたところ、「ソニーのこういうエンタテイメント性を求めていたんです。ぜひ、この世界観にしたい」と言っていただきました。そこから絵本をもとに、子育て世代にPossiを浸透させるコミュニケーションプランを城ヶ野と一緒に練っていきました。

城ヶ野そこで話し合ったのが、家族みんなにPossiのファンになってもらいたいということでした。しかし、従来のような機能訴求の動画やウェブサイトを用意するだけでは、Possiの楽しさは伝わらず、話題にもならないでしょう。そこで、キャッチーなテーマソングやミュージックビデオ(以下MV)をつくり、「あの曲、面白いね」と子どもや親御さんにまず興味をもってもらおうと発想。その上で、公式ウェブサイトなどでPossiの商品について詳しく知ってもらえればと考えたのです。

そんなとき、私自身もファンで、子どもたちに人気のミュージシャン「DJみそしるとMCごはん(以下おみそはん)」が、ソニーミュージックの協力もあり、テーマソングをつくってくれることになりました。ご本人にPossiの絵本を見せながら正式に依頼して数日後、届いたのが「ポッシといーあー」という曲。歌詞も曲調もPossiの世界観を表現していて大満足の出来映えでした。あとは「このテーマソングに相応しいMVづくりだ」と細田と決意を新たにしました。

ポッシのテーマソング「ポッシといーあー」

楽しい現場が、
楽しい世界観をつくる

ソニーのデザイナーたちは、Possiの世界観をつくりあげるために、MVが絶対に必要だと思ったという。その理由とは?さらにどのようなMVを目指そうとしたのか?

城ヶ野コミュニケーションプランを練っていくなかで、スマートフォンで気軽に動画を見たり、共有できたりする現代だからこそ、MVが重要なポイントになると考えていました。「ポッシといーあー」のMVを、子どもや親御さんたちが「楽しいから見たい」「踊りたいから聴きたい」と話題にしてくれるような映像にしたいと思い、ユニークで魅力的な子ども番組を手がけられているドローイングアンドマニュアル(以下D&M)の映像ディレクター 清水さんたちにMVの制作を依頼しました。

清水城ヶ野さんからのオリエンは、Possiの絵本を見せてもらった上で「世界観はこの通りで、あとは自由に考えて、振り切ったものにしてほしい」というシンプルなものでしたね。僕にも幼い娘がいるので、彼女が見たくなるような映像をつくればいいのだと思いました。絵本のストーリーを軸に企画を考えていったのですが、はじめはどこまで「自由に」やっていいのか戸惑いました。公式ウェブサイトが別にあるとはいえ、このMVも新商品のプロモーションの一つですし…だから最初の絵コンテでは「Possiで歯磨きしている」商品説明のシーンもおさえで入れておきました。

城ヶ野そのシーンを見て「こういう説明的なシーンは全く必要ありません。もっと振り切ってください」と言ったんですよね。子どもたちの想像力や感受性は、僕たち大人よりもはるかに豊かで、その世界に受け入れてもらうことは並大抵の難しさではありません。左脳だけで考えるくらい、理屈を取っ払って、もっと自由に考えてほしいと清水さんにお伝えしました。

清水それを聞いて僕自身も吹っ切れ、主演のおみそはんにクチビルの被り物を被ってもらったり、Possiのパペットを両手にはめてもらったりと、企画を膨らませていきました。僕は、Possiがバムシーを退治するのではなく、Possiが歌うとバムシーが踊って仲良くなるというシーンが好きなのですが、そのまま映像化しても面白くない。そこで、バムシー役に全身タイツ姿のプロのダンサーを起用し、おみそはんのゆるいラップで、本格的なダンスを踊り出すというアイデアを城ヶ野さんに話したら「ありです!」と。そのような感じで、僕自身も夢中になりながら、企画を詰めていきました。

ミュージックビデオの世界観を演出するパペットや美術セットのアイデア

ミュージックビデオの撮影現場

D&M 鈴木私は主に美術セットなどのデザインを担当したのですが、城ヶ野さんからのリクエストは「常識に縛られない、子どもの頭の中にあるような島にしたい」という抽象的なものでした。はじめは子どもたちが好きそうなカタチを論理的に考えていったのですが、途中から固定観念にとらわれてはだめだと思い直し、自分が本当に面白いと思うものを追求していきました。その結果、南の島とリビングが混ざり合ったような不思議な美術セットをつくりあげたのですが、それを見た城ヶ野さんから一言「いいですね!」と。その瞬間がとても嬉しかったですね。

森口僕はプロデューサーとして全体を俯瞰していて、城ヶ野さんは清水や鈴木という映像クリエイターの力を最大限に引き出すために、自由な創造の場をつくろうとしてくれていると感じました。その裏には、Possiの楽しい世界観をつくるには、現場自体が真剣に楽しまなければならないという考えがあったからだと思います。制作中、清水も鈴木もキャッキャッと言いながら仕事をしていて、僕は立場上、現場を引き締める役割もあるわけですが、Possiの場合は「この状態が正解だ」と思っていました。

清水そんな現場の明るい空気が伝わったのか、撮影本番は、おみそはんをはじめ、子役の子どもたちやバムシー役のダンサーたちもノリノリで演じてくれました。どのシーンもとても良く、特にファーストカットは一発でOKをだしたほど。僕たち撮影スタッフも終始笑顔でした。スタジオに来ていただいていた京セラのメンバーの方からも笑い声が聞こえてきても嬉しかったですね。現場にいるみんなが楽しんでいる雰囲気がこのMVに表れていると思います。

ミュージックビデオの世界観を盛り込んだ公式ウェブサイト

ソニー 鈴木私もソニー側のデザイナーとして参加していたのですが、こんなに楽しい撮影現場は初めてで、この雰囲気を自分が担当している公式ウェブサイトなどでも表現したいと思いました。そこから、ウェブサイトのメインビジュアルを製品単体の写真ではなく、Possiと子どもが仲良く見つめ合うような写真にしたり、ページ全体のデザインをMVの美術セットをモチーフにカラフルにしたりするなど、MVの世界観を盛り込んでいきました。それによって、プロモーション全体の世界観も統一できたと思います。

新しい価値を生み出すのが、
クリエイティブの仕事

「ポッシといーあー」のMVはSNSを中心に、子育て世代の家族に広がり、クラウドファンディングも達成した。今回のプロジェクトやMVづくりを振り返った感想は?

城ヶ野今回、これまで手がけたことのないテーマソングやMVづくりにチャレンジしたのは、世の中の子育て世代の負担を減らすため、この新規事業を立ち上げようとチャレンジしている京セラやライオンのメンバーを全力で応援したいと思ったからです。結果、クラウドファンディングの達成という大きな成果につながりましたが、それは私たちの提案を皆さんが受け入れてくれたことが大きな要因だと思っています。みんなの挑戦から生まれたPossiのキャラクターが今後、例えばTシャツになるなど、色々なかたちに育ち、Possiの普及に貢献できると嬉しいです。

細田僕は、Possiに限らず、新しいものをデザインするときは「世界観を創る」ことが大切だと考えています。その際に重要なのは、ユーザーの立場で徹底的に考えること。Possiでは、紙粘土を使ってカタチを作り、自宅の洗面所やリビングに置いてみたり、仕上げ磨きをする親御さんや子どもたちの気持ちを考えたりするなかで、シッポを付けたり、歩かせてみたりして「仲良しの生きもの」という世界観にたどりつきました。さらに、その世界観をクリエイティブチームの力を結集することで、自分でも想像以上のかたちで表現することができ、Possiに新たな価値を生み出せたという手応えを感じています。とにかくプロジェクトを進めるのが楽しかったです。

僕たちが所属するのは、クリエイティブセンターの中でも外部企業との協業案件を担当するチーム。今後もさまざまな業種の企業や人と一緒に、世の中に新しい価値や幸せを提供していきたいと考えています。

子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変えた、仕上げ専用歯ブラシPossi。
ソニーデザインは今後も、人々の気持ちや暮らしを見つめ、
クリエイティブの力で世の中が少しでも楽しくなるような提案を続けていきます。