Sony Design

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SST Type Project
Special Interview

with タイプディレクター小林章

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SSTフォントの特長

「何十年も使い続けられる、
タイムレスで
スタンダードなもの」

小林 SST®フォントの一番の特徴はなにかと問われれば、それは、特徴が目立たないことだと思います。もちろん、面白い形の文字をつくってあえて特徴づけるという手法もありますが、やはりソニーの製品に使われることを考えるとプロダクトそのものが引き立つ方向にしたい。文字自体にはあまり余計な情報を付け加えず、文字が脇にいてでしゃばらないイメージです。硬さ、やわらかさ、プロダクト感や自然なプロポーションなど、いろいろな要素が一つに集約したときにソニーらしさが表現できているのが理想です。だから一文字一文字を見比べてみても、別にどこが他のフォントと違うとは感じないくらいに良い意味で非常にくせがありません。もし店頭でSSTフォントが使われた商品パッケージを見たとしても、文字が変わったと気づく人はあまりいないでしょう。そんな風にとても自然な形でプロダクト感のあるものに仕上がったと思います。

福原 ソニーとしても最終的にはコーポレートフォントにするつもりでつくってきたので、当然長期間使うものになります。ずっと使い続けるためには、やはり時代性のないタイムレスで普遍的なもの、スタンダードなものに仕上げたかったので、このフォントはかなり理想に近いと思いますね。

小林 タイムレスであるというのはタイプフェイスデザイナーとして常に考えることで、流行りのものを安易に取り入れると2、3年後には古く見えてしまいます。そういうものは避けて、何十年も使えるスタンダードなものを目指して今回のSSTフォントもつくっています。

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SSTフォントの多言語展開

「93カ国語対応のフォントを
ゼロからつくるという
チャレンジ」

福原 あと、今回のプロジェクトで一番の難題だろうと想像していたのは多言語対応のフォントをつくることでした。ソニーは世界中の地域でビジネスをしていますので、 多言語に対応することはこのプロジェクトでは必須でした。

小林 最初に日本語とラテン語、アルファベットが基準になるのは予想していたのですが、徐々に対応言語の全体像がはっきりしてくると、ギリシャ文字やキリル文字(ロシア語)、それからタイ文字、アラビア語まで入ってくることが分かってきて、これは大変だなと思いました(笑)。ただ、私一人で請け負うわけではなく、これまでもギリシャ文字が必要になったら、ギリシャにいる専属デザイナーに発注して私がディレクションするということをしてきたので、そこはモノタイプ社のネットワークをうまく活用しました。

文字は普段からその言語を生活で使っていて、これが読みやすいんだと言える人がつくった方が当然いいので、現地のデザイナーがつくったものに対して文字のカーブの仕方など細かなディレクションをする方法をとりました。ギリシャのデザイナーに発注したときですが、「α」という文字は最初、縦線を引く方の「α」の形でデザイナーから上がってきました。しかし私としてはソニーのαという一眼カメラを知っていたので、そのイメージで線を結ぶ方の「α」にしたかった。そこで、デザイナーに相談すると快諾してもらえました。こんな風にギリシャ文字に限らず、こちらのデザイン意図に柔軟に対応してくれるデザイナーたちと一緒に仕事ができたのは大きいですね。そのおかげでSSTフォントのコンセプトをあらゆる言語にうまく反映させることができました。本当にすごくいい形でコラボレーションできたと思います。

福原 ひとつの書体をゼロからデザインし、さらにそれを多種多様な言語に同じコンセプトで統一感を持たせながら展開することが今回最も大変なことでしたが、それがこのプロジェクトの一番のポイントでもあったと思います。その苦労のかいもあって、これからは日本も含め93カ国もの言語が「SSTフォント」という共通のフォントで文字が組めるようになったわけですから。

小林 和文に関しては、ひらがなやカタカナの特長は横方向の線が多いので、ジオメトリックにするために、なるべく抑揚をつけず水平線にそろえるように仕上げてもらいました。本当ならカーブを付けた方が落ち着くような文字もなるべく横線を使って整理し、横のラインをきちんとそろえてもらっています。

福原 和文は確かに抑揚を極力つけずにつくられていますが、その分ほかのところでバランスをとらなければいけないので相当難しかったですね。でもSSTフォント全体を見たときに、和文も同じコンセプトでできていることが大事で、日本での製品やプロモーションでも同じ書体を使っていれば、世界中で同じコミュニケーションができる。もちろんその逆もあって、日本で決めた方向性を各国に反映させることもできます。

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SSTフォントの意義

「国が変わっても、
デバイスが変わっても、
同じ体験を提供する」

福原 製品の機能を説明したり、デザイン意図を語ったりと、ソニーのメッセージを伝えるのに文字はすごく重要です。文字はお客様とのコミュニケーションを担うものであり、文字の印象によって製品の印象も変わるからです。だからこそ、製品に印刷されている文字や、ユーザーインターフェースに使用されている文字の書体にまでケアして初めて、本当にベストな状態で製品を提供できると思います。SSTフォントをつくったメリットはいろいろありますが、これからは世界中どこでも、どのようなデバイスでも、共通の質の高い書体を使うことで、同じユーザー体験を提供できるようになることが一番のメリットではないでしょうか。

小林 確かにソニーのようなグローバルな企業が、世界中に情報を発信するとき、日本語や英語、アラビア語など、言語ごとに見え方がバラバラだと企業の

小林 確かにソニーのようなグローバルな企業が、世界中に情報を発信するとき、日本語や英語、アラビア語など、言語ごとに見え方がバラバラだと企業の持っているトーンやメッセージそのものが伝わりにくくなってしまいますね。だから英語圏で見たイメージでも、アラビア語圏で見たイメージでも、同じようにソニーらしさを感じられるように書体の特徴となる部分を整理しました。ソニーの静かで力強い印象に文字を形づくることで、文字を組んだときに、言葉ひとつ一つからソニーのメッセージがしっかり伝わってくるようにすることが今回のプロジェクトの一番のカギだったと思います。93カ国語でそれを貫けたというのは非常に意義が大きかったですね。

SSTフォントが実際にこうしてWEBなどで使われているところを見ると、当初から目指してきたソニーらしさを感じさせつつ、タイムレスに何十年も使えるスタンダードな書体を実現できたのかなと改めて思います。

SST is a trademark of Monotype GmbH registered in the U.S. Patent and Trademark Office
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Helvetica and Frutiger are trademarks of Monotype Imaging Inc. registered in the U.S. Patent and Trademark Office
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