VISION-S Prototype Design Story

なぜ私たちは
リアリティを追求したのか

#5 コミュニケーションデザイン

プロダクトデザインと並行して進められた、もうひとつのデザイン領域、それが「世の中にどう伝えるか」を考えるコミュニケーションデザインです。
最初に思想を込め、最後に世に解き放つ。この車の本質は、プロダクトの完成度に加え、人々への伝え方にかかっていました。

ソニーの「移動」の姿は
どうあるべきか

ソニーは次世代の「移動」の姿を考えていました。人々へのさらなる安全や感動の提供や、環境との新たな関わりへの提案です。社会や業界の未来に本気で貢献するために、実現可能で持続可能な未来の姿を世界に示す必要がありました。そのような背景からコミュニケーションデザインに課せられた最初のミッションは、「ソニーのモビリティのあり方を明快に見出すこと」でした。そこでチームは、この取り組みのビジョンとしてまずは言葉で「挑む気持ち」と「人への寄り添い」を表現しました。それはプロジェクト全体で共有され、活動の根幹的な精神として最後まで貫かれることになりました。

エンブレムではなく、新たな「つながりの象徴」

人を中心におき、人を包み込む。そのような車のイメージが見えた頃に、いわゆる「エンブレム」のあり方とは違うシンボルが、電気回路図用の図記号をモチーフに作成されました。両サイドにどこまでも延伸する「S」。エクステリアデザインにおいてはDRLと一体化し、シンボルから生まれた光の帯がボディ全体をOVAL状にループします。その光の円環自体が車の象徴であり、同時に人を包み、社会とつながるきっかけとなるソニーの思想の象徴でもあります。

カラーマネジメントによって性格を定める

自動車とは元来、ハードウェアとテクノロジーの凝縮体です。一方で、電子的な冷たさは、「人を包む」を志したVISION-S Prototypeにとって相応しい印象ではありませんでした。そこで、未来的でありながら日常の温かさを感じる「ウォームグレー」をブランドカラーに設定しています。品質感が醸し出され、それでいてぬくもりを帯びる絶妙な色合いへと入念に調整し、車の性格を演出していったのです。

実在を伝える、
徹底的なアセットづくり

実際の車を目にする機会の少ないVISION-S Prototypeに、それでも揺るぎない「実在」を感じてほしい。そのために、主にオンラインで展開される表現物(クリエイティブアセット)に高度なリアリティを求めました。例えばコンセプトビデオでは、観るひとが感情移入できるように、映像クオリティに加えて物語性をも追求しました。クリエイティブに挑む主人公の気持ちに車のテクノロジーがポジティブに呼応し、その調和はやがて社会全体へと広がってゆく。ステアリングを握る主人公は、信念を持ちあえて困難に挑むクリエイターとして、そこにチームの姿勢も反映させました。こうして緻密に作り込まれたアセット群が、VISION-S Prototypeのリアリティある世界観を生み出しました。

驚きは世界中へ。
そして挑戦は
さらなる未来へ

VISION-S Prototypeは、世界最大の家電見本市CES 2020で満を持して発表されました。ぬくもりを感じる「ウォームグレー」に統一された会場は、展示デザインからプレゼンテーションスライドまで、あらゆる点にプロジェクトの精神が行き届くように計画されました。モビリティの進化への貢献にソニー全体で取り組んでいくことの象徴として、車はステージの中央に堂々と展示されたのです。

車を中心にあらゆる得意分野がつながってゆく

車はひとつのプロダクトであると同時に、センサーなど他の無数のプロダクトの集合体であり、さらに映画や音楽などのコンテンツを体験する空間でもあります。ソニーが思い描くのは、直接的、間接的に自らの得意分野が連動しあい、モビリティの価値をますます高めてゆく未来です。「事業部門、エンジニア、デザイナーが呼吸を合わせ、さらに外部パートナーとも連携しながら、人を感動させるという同じゴールへと突き進む。人の想いが未来へつながる可能性をそこに見ることができました(城ヶ野)。」ソニーのデザイン領域は車をひとつの起点として拡張され、大きく広がりを見せています。そして、そこから創造される新たなモビリティの姿は、再びデザインの力によって、世界へと伝えられることになるはずです。「作るデザインのそばには、伝えるデザインが常にあります。その両輪でこの先も大胆な挑戦を繰り広げていきたいですね(前坂)。」

チーフアートディレクター 前坂 大吾 / シニアアートディレクター 城ヶ野 修啓