Sony Design

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Immersive Space Entertainment

Music visualizer & Cyber gym

「未来の体験」に
必要な技術を、
デザイン側から提示する

デバイスを身に着けずに、VRコンテンツに没入可能な空間として開発されたImmersive Space Entertainment。
デザインから「未来の体験」「未来のメディア」を示し、
そこからバックキャストすることで未来に必要な技術の開発に繋げていきたいという
同プロジェクトを率いるプロデューサーに、込めた思いを聞きました。

デザインが
「目的自体」を作ってみる

Immersive Space Entertainmentが生まれた背景を教えてください

梨子田(プロデューサー):ぼくは普段、インターフェースデザインに携わっています。ブラビアをはじめ、目的や用途がはっきりしている製品をより使いやすくするためには、どのようなGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)がふさわしいかを考えているわけです。それに対して今回は、デザインの側から「目的自体」を作ってみようという逆の発想を試みました。

コンピューターグラフィックスの演算能力が上がったことで、レスポンシビリティのあるハイクオリティな映像を作れるようになりました。そのひとつの極みがVRだと思います。現在、VRを体験するデバイスとしてHMD(ヘッドマウントディスプレイ)があるわけですが、市場で展開されているVR/ARソリューションとは異なる形で没入感を出すデザインはできないだろうか…。それが、このプロジェクトのスタートでした。没入感を醸成するためには、一つの方法として視野を覆ってしまえばいいわけなので、プロジェクターを使って半球状のドームに投影するというアイデアにたどり着きました。

それをソニーらしく美しい映像にしたいと思いましたが、単発のプロジェクターだとピクセル数が限られます。また、4Kのプロジェクターを2台使って丸い映像を作ると、高解像度は保てますが、近い距離だと乱反射を起こしてしまう。そこで、反射率を下げる塗料を塗ったり、ワイドコンバージョンレンズを使って画を広げたり、それらをステッチングする技術を使ったりと、既存の技術を組み合わせて開発しました。

3つのコンテンツ、
それぞれの狙い

今回SXSW2017への出展に際して、Immersive Space Entertainment用に、360度の映像を自然な動作で体験してもらう「360 Movie」、音楽をビジュアライズした「Music visualizer」、そして新しいタイプのエンターテインメントとして提案した「Cyber gym」という3つのプログラムを用意されました。その狙いと手応えを教えていただけますか?

梨子田:まず「360 Movie」ですが、当初は顔の向きを検出し、それに映像が追従するシステムを作っていたのですが、それだと神経質に動きすぎました。そこで座っている椅子と映像を連動させてみると自然な動作として違和感がなくなったのです。こういったプロトタイピングしたからこそ得られた「感覚のデザイン」を大切にして開発しています。IMAXシアターのように包まれる感じの映像ディスプレイを見る体験を、はるかに小さなスペースで実現できたという意味では、未来のメディアとしての可能性を感じることができました。

2つめの「Music visualizer」は、音楽に反応して精密なグラフィックが生成されるコンテンツなのですが、これを発展させていくと、いままでは聴くだけだった音楽が、視覚的にも包まれるような気持ちのいい体感になるではないかと思います。

そして3つめの「Cyber gym」は、エアロバイクの傾きや漕ぐ速度に映像が反応し疾走するコンテンツで、展示コンテンツの中では最も人気があり今すぐ欲しいといった声も聞かれました。装置の規模を考えると、フィットネスジムなどのニーズが考えられるので、エンターテインメント型エクササイズ業態として展開できると面白いと思います。

Immersive Space Entertainmentは今後、大型のテレビのような役割に加え、ヴァーチャル体験メディアとしての場所や時間を変えていけるような装置としての可能性があると思います。私自身は、この装置は家庭に入っていくことが理想だと思いますが、実現するにはまだまだ課題が山積みです。

プロトタイプを
「公開」するメリット

Immersive Space EntertainmentはSXSW2017で初めてお披露目されたわけですが、プロトタイプ段階のものをパブリックに公開するのは、ソニーとしても珍しいことなのではないでしょうか?

梨子田:はい。公にすることにリスクはあると思います。しかし「未来の体験にはどんな技術が必要なのか」をデザインから提示し、そこからバックキャストして必要な技術を開発していくといったプロセスも、新しいデザインの手法では、「あり」なのではないかと思っていました。

ラピッドプロトタイピングでとにかく体験可能なものを作り、体験してもらうこと自体に重きを置く。それを今回できたのは、とても価値のあることだと思います。とりわけインタラクションの領域は、人間の主観に左右される部分が大きいため、「おもしろい」とか「心地よい」といったことは、体験した人が実際にそう感じることが非常に重要です。

これまでソニーは、音楽や映像といったメディアを扱ってきました。そこにVRという「体験メディア」が加わったと考えます。体験メディアの時代においては、視聴覚以外の感覚、たとえばハプティックや匂い、風などの技術を活用して、ゾクゾクするような感動をもたらすことが可能になると思います。

テスト段階で半球ドームに等身大の人間を投射してみたのですが、まるで本物の人間がそこに立っているように見えるので、目が合った瞬間のドキドキ感がものすごかったです。今後Immersive Space Entertainmentは、こういった感動の萌芽をきっかけにして、新しいメディアというパラダイム変化の一端を担っていけると良いと思います。それには、「作って、体験して、イテレーティブに回していく」といった新しいデザインのスタイルを、現場でもっとやっていくことが重要だと考えます。

写真左から、エンジニアリングデザイナー 三上、プロデューサー 梨子田、エンジニア 山崎、エンジニア 高橋