迷ったら、キャリアの選択肢を広げるためにも、まずトライ

迷ったら、キャリアの選択肢を広げるためにも、まずトライ

喜多村 扶佐子
ソニーLSIデザイン株式会社 第3技術部門

ものづくりに関わる仕事がしたくて、数学専攻から半導体の世界へ

私は子どもの頃から算数が得意で、パズルを解くようなおもしろさが好きだったので、大学でも数学を専攻しました。同じ専攻の仲間たちは多くがソフトウェアエンジニアをめざしていましたが、教授の紹介で電機メーカーを見学したときにさまざまな製品を見せてもらってから、電機メーカーで働いてみたいと思うようになりました。就職先は、両親がソニー製品を好んで使っていたこともあり、親しみのあるソニーを志望。調べてみると、4、5年前に同じ学部を卒業してソニーにエンジニアとして入社した女性の先輩がいることを知り、OB/OG訪問をしました。会社の雰囲気をたずねると、男女を意識せずに働ける、堅苦しくない職場だよと言われ、不安な気持ちが消えたのを覚えています。

ソニーに入社するとき、できるだけ多くの製品に関わりたいと希望を伝えたところ、さまざまな製品に欠かせない半導体(LSI)の部門に配属が決まりました。数学専攻だった私は、最初の頃は半導体のことがよくわからず大変でしたが、女性だからと区別されることもなく、エンジニアの一人として接してもらえました。当時、半導体部門は他の開発部門に比べて女性エンジニアが多く、みなさんが自分の担当領域を持って活躍していたので、自分もあんなふうになれるように頑張ろうと思っていましたね。半導体部門では、半導体を設計するためのツールづくりを中心に、ツールの管理システムを作ったり、市販のツールを応用した設計環境を提供したり、さまざまな経験をすることができました。これらのツールは、ソニーのデジタルカメラやビデオカメラ、ポータブルオーディオプレーヤーといった製品に搭載されている半導体の設計に使われるもので、開発に関しては製品の性能にこだわる設計者の期待にタイムリーに応える難しさがありました。最初は、一人で小規模なものの開発を担当していましたが、汎用性のあるシステム開発を行った際には、グループリーダーとしてさまざまな開発要件の整理を行いつつ、大規模な開発を進めました。このときに得た広い領域の知見は、現在のマネジメントの仕事にも役立っていると思います。

ソニーLSIデザインで設計した半導体デバイス

同僚が快くサポートしてくれて、育児で大変なときも救われた

プライベートでは、同期入社の夫と結婚し、2児の母になりました。もともと出産後も仕事は続けたいと思っていたのですが、育児休職後に職場復帰している先輩が何人もいたので、絶対に戻るところはあると思って、安心して育児休職に入ることができました。1人目を出産したとき、1年間も仕事をしない期間を初めて経験しましたが、そのとき強く思ったのが、私は働くのが好きなんだなということ。その思いは、仕事に復帰してからも大変なときの支えになったので、育児休職は自分の意志を再確認するいい機会になりました。結婚・出産というライフイベントに直面して、仕事を続けるべきか悩む人もいると思いますが、まずは短時間勤務など無理のない働き方で続けてみてはどうでしょうか。決断するのは、自分の意志を再確認してからでも遅くないと思います。

育児休職終了後、仕事へはフルタイムで復帰したのですが、とても助かったのがフレックスタイム制を利用できることでした。子どもが病気になったときなどは、午前中は私が出社して、午後は夫と交代して自宅に戻って、夕方また交代して職場に戻ってと、夫婦でフレックスタイム制を最大限に利用させてもらいました。また、同僚がサポートしてくれたことも、大きな助けになりました。突然休まなければならないときでも、みんな快く対応してくれたのは、上司自らが個人の事情に合わせた働き方を認めてくれていたことで、育児中の人を助けるのは普通のことだという風土があったからだと思います。育児が特別なことではなく、みんなが普通に仕事と両立している職場だから、子どもが小さくて一番大変な時期も、どうにか乗り越えることができました。

仕事と両立しながら育てた子どもたちも、今ではこんなに大きくなりました
職場があるソニー(株)厚木第2テクノロジーセンター

キャリアアップをすすめてくれた人は、自分を助けてくれる人

現在は、半導体開発部門でマネジメントとして、メンバーに意見をもらいながら業務の方向性を確認したり、開発案件が重なった場合の優先度を決めたりしています。マネジメントにチャレンジしたきっかけは、2人目を出産し、育児休職が明けて数年経ったときに、当時の部長から「課長に向いていると思うから、やってみない?」とすすめられたことでした。部長とは付き合いが長く、なんでも話せる間柄だったので、「課長は大変じゃないですか? 困ったら助けてくれますか?」とつい言ってしまったのですが、部長は「もちろん助けるよ。推薦するんだから」と言ってくれたのです。自分には助けてくれる人がいるんだから大丈夫だと、思い切ってチャレンジすることを決めました。キャリアアップを上司にすすめられたら、断らないでトライしてみるといいと思います。すすめてくれた人は、困ったときに助けてくれる人。キャリアアップしたあとも、味方になってくれるはずですから。

将来が見えないときこそ、キャリアアップにトライしてみる

マネジメントを経験してみてよかったと思うことは、やりたい仕事がより実現しやすくなったこと。担当する領域が広がることで、周囲の状況や業務の優先度が見えるようになり、仕事の相談相手を説得しやすくなって、エンジニアだった頃よりも仕事を実現しやすくなりました。マネジメントになった今は自分で手を動かすことはないのですが、試行錯誤しているメンバーに対して、実現までの道のりが少しでも近くなるようにアドバイスしています。また、マネジメントする側になって意外だったのは、自分で時間のコントロールがしやすくなるということでした。自分の予定も組み込んだ上で、全体のスケジュールを立ててもらえるので、時間を効率よく使えるようになり、仕事がしやすくなりました。

人と知り合う機会が増えたのも、よかったことのひとつです。いろいろな人に会って会話をすることが、自分の中の世界を広げるきっかけになって、仕事の面ではもちろんですが、自分の人生にもプラスになっていると感じています。もし、キャリアアップすべきかどうか迷っている人がいたら、自分の知見や将来の選択肢を広げておくという意味でも、ぜひトライしてほしい。将来の自分がイメージできていないときこそ、トライしてみる価値があるのではないでしょうか。現在、育児との両立などで大変な人も、この状況がずっと続くわけではないと思います。5年先、10年先、状況が変わったときのためにも、選択肢を広げておくといいと思います。

目を見て話すことから始まる、ダイバーシティ&インクルージョン

私が普段、マネジメントする上で心がけているのは、かつて私の上司が背中を押してくれたように、メンバーの可能性を決め付けないということです。たとえば、短時間勤務をしているメンバーに、今以上の仕事を任せるのは無理だとつい考えてしまいがちですが、まずは本人の意志を確認して、やるかやらないかを本人が決められるようにしています。時間を減らしてあげたほうがいいと思っているのは私だけで、本人はやってみたいと思っているかもしれませんし、もっと効率のよい方法を見つけられるかもしれません。また、育児を担っているメンバーは男女に関わらず、それ以外のメンバーに対しても、近況を情報交換したり、時間配分に無理がないかといった声がけをしたり、より働きやすい職場にするための提案を受けたりしながら、グループ全体でさまざまな立場の人が働きやすくなるように心がけています。

もうひとつ心がけているのが、メンバーの目を見て話すこと。パソコンに向かって仕事をしているときは、いったん手を止めて、話をする人のほうを向いてから話すようにしています。目を見て話すことから相手を受け入れることが始まり、メンバーそれぞれの力を引き出すことにつながると、私は思っています。ソニーにはさまざまな働き方、さまざまな個性を持つ人がいて、周囲に受け入れられながら働いています。私もかつて、同僚に受け入れてもらい、育児と仕事を両立することができました。一人ひとりの個性を受け入れ、それぞれがそのままで力を発揮できるようにしていく。それが、ソニーのダイバーシティ&インクルージョンなのだと思います。

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