異なる文化や背景を理解すれば、世界中の人とコミュニケーションできる

異なる文化や背景を理解すれば、世界中の人とコミュニケーションできる

姚(ヤオ) シュアン
ソニー・エレクトロニクス アジア パシフィック

誰かの人生に貢献できる仕事がしたくて、人事の仕事を志望

私は、中国の山東省に生まれ育ちました。両親が海外赴任していたこともあり、子どもの頃から海外に興味を持っていました。将来は世界中のさまざまな場所で働いてみたいと思い、大学ではフランス語を専攻し、サークル活動では国際交流クラブに所属しました。そこで人事セクションのリーダーになったことがきっかけで、誰かをサポートすることでその人の人生に貢献できるような仕事がしたいと考えるようになりました。
就職を考え始めたちょうどその頃、ソニーのグローバルインターンシップというプログラムの存在を知りました。私はもともとソニーが好きで、携帯電話やウォークマンなど多くのソニー製品に親しんできたので、ぜひ参加したいと思って応募しました。人事部で2カ月間の職場体験をしたのですが、日本語がまったく話せない私に職場の先輩たちは、気軽に英語で話しかけてくれたり、ランチに誘ったりしてくれたりしました。外国籍の方もたくさん働いていて、ソニーはグローバルな企業だという印象を受けました。そして、とても働きやすい会社だと感じて、ここで仕事をしてみたいと思いました。

職場の人たちに助けられて、言葉の壁を乗り越える

入社後は国際人事部に配属になったのですが、当時はあいさつ程度の日本語しかできなかったので、とても不安でした。そんなとき、人事部の採用担当の方から3カ月間無料で受けられる日本語研修があることを教えてもらいました。しかし、3カ月では仕事で使えるレベルに到達するのは難しいと思い、その悩みを上司に伝えたところ、研修期間を1年間に延長してもらえました。私のような外国籍社員は多いので、その人の状況にもよりますが、十分な語学研修などといった採用後のケアは重要だと思います。また、当時私の指導を担当していた先輩が、日本語が早く上達するようにと交換日記をしてくれました。今日やった仕事や明日やりたいことなど、私が書いた文章に対して先輩は「この使い方は合っている。素晴らしい!」とか「ここはこうしたほうがいい」と丁寧にアドバイスしてくれました。今でもその先輩には、とても感謝しています。
日本語がある程度話せるようになってからも、会議などで難しい日本語が出てきたときは、同僚が英訳してくれました。また、日本の企業では日本語のみのメールが一般的だと思いますが、ソニーでは日本語と英語の併記が標準になっていて、社内文書や食堂のメニューも英語が併記されているので、仕事をしていて困ることはありません。でも、日本社会全体では英語対応が進んでいるとは言えず、外国籍の人にとっては暮らしにくいのが現実。私自身、日本で初めて携帯電話を契約するときに、契約内容が理解できず、苦労したことがありました。外国籍社員が日本で力を発揮するためには、仕事面だけでなく生活面でのサポートも重要だと感じています

新入社員時代、新人テーマ研修で発表したときのワンシーン
食堂の案内板にも日本語と英語が併記されている

相手に興味を持つことが、相手を理解するための第一歩

国際人事部では、日本に赴任している外国籍社員をサポートする仕事を担当しましたが、中には自己主張が強い方もいて、どうしたらお互いに納得のいく話し合いができるのかわからず、最初はとても悩みました。それを上司に相談したときに、「人に興味を持つことが大事」とアドバイスをもらい、実際に相手に興味を持つようにしてみると、その人の考え方の背景や価値観が見えてきて、話し合いがスムーズに進められるようになりました。また、日本の文化や歴史について書かれた本や、日本が紹介されている旅行誌、ソニー創業者の一人の盛田昭夫さんが書かれた本を読んでいくうちに、徐々に日本人の考え方や何が大事とされているのかも理解できるようになりました。
ソニーにはダイバーシティな企業文化があり、仕事のやり方の中でもそれを示すものが多くありますが、私がいいなと思っているのが、役職がある方に対しても「さん付け」で呼ぶことです。部長や課長といった会社の肩書きで呼ぶ習慣のない外国籍社員には、うれしい企業文化です。親近感が生まれるので、目上の方ともコミュニケーションしやすくなります。社内で行われる「ダイバーシティウィーク」の講演会もよく聴講していますが、多様性の尊重をテーマとした講演は、日本人社員が外国籍社員のそれぞれの文化を理解し、受け入れやすくすることに役立っていると思います。

シンガポールの文化を受け入れ、理想の働き方を発見

入社して約2年半経った頃、上司から「シンガポールで仕事をしてみないか?」と言われました。私は若いうちにさまざまな世界を見ておきたいと思っていたので、シンガポール行きを快諾しました。シンガポールでの仕事は、東南アジア地域への日本人社員の赴任、着任、帰任プロセスのみならず、赴任期間中の仕事、キャリア、生活にまつわる相談窓口になりサポートすることです。日本人社員は、一般的に見ると控え目な方が多く、自分の意見をどんどん主張する東南アジアの職場の雰囲気に困惑する方もいます。そんな方の悩みを聞き、相談にのることも私の仕事です。東南アジアは中国と文化的に近いので、日本と中国両方の文化を理解している立場から、東南アジアの人の考え方や対処のしかたなどをアドバイスしています。また、シンガポールでは、同僚や上司全員のフルネーム、年齢、家族構成、趣味などを覚え、ちょっとした会話をするときの話題にしています。相手を気遣っていることが伝わり、仕事の会話も前向きに進めることができます。
シンガポールは多民族国家なので、ダイバーシティを大切にすることは当たり前。国籍や民族という枠を越えて、人々を大きな一つの家族にしようという精神がある土地柄なので、ソニーのシンガポールの職場でも、みんなでゲームやスポーツを楽しんだり、旅行に行ったりしています。日本での仕事の仕方と比べると、仕事とプライベートの境界があいまいなように感じますが、実はプライベートなところには踏み込みすぎず、程よい距離感が保たれているので、同僚と深く関わるのに苦手意識がある私でも、すぐにみんなと打ち解けることができました。また、それまで私は、仕事とは自分で目標を立てて、ある程度までは自分一人で完成させるものと思い込んで、働いていました。でも、シンガポールでは、仕事はやりながらみんなで完成させるもの、という考えが一般的です。一人ではできることに限りがありますが、みんなで取り組めばできることが広がるし、仕事のスピードも速くなります。シンガポールの文化を理解し受け入れることで、みんなの意見を聞きながら一番いい成果を出すという、私にとって理想的な働き方を発見することができました。

シンガポールの人事部の同僚(上)とチームづくりの研修の様子(下)

世界中の人と理解し合いながら、グローバルに活躍したい

日本とシンガポールで、海外赴任者をサポートするという仕事を通じて私が感じたのは、たとえ国籍や民族が違っても、人の本質的な部分はあまり変わらないということです。言葉や文化の壁さえ乗り越えられれば、その先にあるのは世界共通の「人と人とのコミュニケーション」だけです。そして、コミュニケーションを成り立たせるためには、多様な文化や背景を持つ一人ひとりを理解し、受け入れる環境をつくることが必要です。海外赴任者の方たちが1日も早く壁を乗り越えて、違う土地で思い切り働くことができるように、これからもサポートしていきたいと思っています。
次に仕事をしたい地域はアメリカです。東南アジアや日本、中国と比べて、アメリカでは、自己主張の強さや考え方も違うでしょうし、成果が出せればOKなのか、プロセスも重視するのかなど、仕事に対する考え方も違うのではと想像しています。これまでとは異なる文化の中でコミュニケーションしながら仕事をすることは、私にとってはとても魅力的なことです。いろいろな国の人と会話をし、その国の人々の考え方を知ることで、自分の視野をどんどん広げ、世界中どこの国や地域でも活躍できるグローバルな人間になっていきたいと思います。

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