自然体で無理せず、仕事も育児も楽しむ

自然体で無理せず、仕事も育児も楽しむ

若木裕美
ソニー株式会社 R&Dセンター
基盤技術研究開発フィールドTokyo Laboratory 21・6課

研究に追われる日々から少し離れて、本当に好きなことに気づく

小学生の頃からずっと理系科目が好きで、特に工作でものを作るのが楽しかったです。祖父が中学校の理科の先生をしていたこともあり、いろいろな実験を見せてくれたり、仕組みを解説してくれたりしたおかげで、「理科は楽しい!」という感覚が自然に身に付いたのかもしれません。理科は勉強というより、身の回りにある楽しい遊びであり、自分の好奇心を満たしてくれるものでした。就職について考えるようになってからは、企業に入って世の中のみんなに使ってもらえる商品をつくりたいと思っていました。

大学では工学部に在籍し、電子情報工学科を専攻。情報系の学科でしたが、半導体や電力など周辺領域も学びました。その後は、「就職先が狭くなるとは聞くが、自分の特徴にはなるだろう」と軽く考えて博士課程に進んだのですが、想像以上に大変で、本気でやめようと考えた時期もありました。でも、指導教官や先輩に「ちょっと休んで気分転換すれば」と言われ、1カ月ぐらい何もしないで過ごし、久しぶりに研究室に行ったとき、すごく楽しいと感じました。それまでは「やらなきゃいけない」と追いつめられて、楽しむ気持ちを見失っていたのだと思います。この博士課程があったからこそ、自分が本当に好きな分野に進んだことに気づくきっかけになり、また何ごとも最後までやり遂げられる強さが身に付いたと感じます。

卒業後はメーカーに就職し、自然言語処理、情報検索、対話システムなどの研究開発に携わっていましたが、他の環境にも身を置いてみたいと転職を決意。ソニーは新しいライフスタイルを提案したり、チャレンジ精神にあふれているイメージがあり、これまでにない自由さや新しい空気が感じられそうだと思い、転職先に選びました。

価値観の違いにとまどいながらも、その面白さを発見する

入社する前は、もしかすると転職者は不利なのではないか、本当に子育てしながら働ける雰囲気はあるのかなど、不安もあったのですが、実際に入ってみると中途採用者でも分け隔てなく、温かく迎えてもらえました。職場の同僚たちは、同期入社のネットワークがない中途採用者の私を気づかって、イベントに呼んでくれたり、周囲と打ち解けられる企画を催してくれたり、社員同士のつながりを作れる機会を設けてくれて、多くの知り合いができました。

入社後、以前の職場と比べて感じた大きな違いは会社が大事にしている価値観です。以前の会社では事業の特性もあって、「安全・安心」や「役立つ」などを大切にしていたのに対し、ソニーでは「感動」や「ユーザー体験」といった感性重視の価値観を大切にしています。今まで仕事において主に「役に立つこと」を考えてきたのに、急に「感性」と言われても始めからすんなり理解できるわけではありませんでした。でも、製品コンセプトについて議論していくうちに、ソニーでは心が揺さぶられるかどうかを判断基準にしていることがわかり、商品やサービスの発想の原点に面白さや楽しさを感じるようになりました。

現在は、大学時代から研究していた「自然言語処理」という言葉を解析する領域に携わっています。主に話し言葉を研究しているのですが、人間はしゃべった言葉そのものだけでなく、背景知識も使って言葉を解釈しています。それを機械で適切に処理するために、文全体でどんなことを表しているのか、どんなキーワードが含まれているかなど、その発話の意味を解析することで、今までにない体験や新しい日常につながる製品づくりに挑戦しています。

仕事と子育てのバランスをとり、本当の意味で両立できる

前職場で妊娠・出産を経験し、現在7歳と4歳の子どもがいます。普段は子どものお迎えがあるので毎日午後6時には退社し、子どもの習い事の付き添いなどで早く帰ることもあるため、会議の時間などを調整してもらっています。どうしても日時が調整できない場合は、家庭内で分担して仕事に支障がないようにしています。家族との生活も、仕事で結果を出すのも、私の人生にとってどちらも大事な要素。どちらかを優先するために、もう一方を犠牲にすることにならないよう、上司やチームのメンバーには、家庭と仕事どちらも大切にしていることを理解してもらっており、仕事のことも子育てについても遠慮なく相談しています。

仕事と育児の両立を考えるなら、育児ができるように調整できるのはもちろんですが、仕事にもしっかり取り組めるように、バランスがとれる雰囲気づくりや環境が必要だと思います。ソニーでは、育児が大変なときは「じゃあ、休んで」みたいな感じではなく、「どうしたらいいんだろう?」とみんなで一緒に考えてくれます。育児のためにまずは仕事を減らすという選択肢ではなく、働きたい人にはしっかり仕事ができる環境が整っていて、家庭と仕事のバランスをとりながら、本当の意味での両立ができる選択肢を与えてくれる会社だと思います。また、現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全社的に原則在宅勤務を実施していますが、ソニーではそれ以前からフレキシブルな働き方をしている社員が多く、子育て中かそうでないかに関わらず、仕事とプライベートのバランスをとりながら働ける土壌があると思います。

それから、家族の協力なしには育児と仕事の両立は難しいので、夫にはとても感謝しています。夫は子煩悩で家事スキルも高いので、とても頼りがいがあります。育児も家事も基本的には半々で分担し、いつでも入れ替われるようにしています。

3年前、家族で青森の奥入瀬渓流を散策。シダの胞子のことを息子に教えると、シダを見つけては葉の裏を確認していました

メンバーを理解し、それぞれの個性に合わせたチームづくり

昨年末から統括課長になりました。リーダーの頃は自分がまとめる領域の情報しか入ってこないので、見えない部分が多かったのですが、マネジメントの立場になってからは、より広範囲の情報を知ることができるようになりました。メンバーが抱えている仕事を把握し、業務の負荷分散や仕事をアサインする場合の適任者の任命も含めてできるので、仕事が全体的に見通しやすくなったと思います。

私がマネジメントをする際に心掛けているのは、メンバーのバックグラウンドを理解すること。「好きなことは何か」「なぜソニーに入社したのか」「これから何をしたいのか」など、一人ひとりの得意なことや性格を意識しながら、仕事の中に楽しさが感じられるように、個性に合う業務の割り振りやオーバーワークにならない仕事量に配慮しています。中には上司に気を使って意見を言えない人がいるかもしれないと思うので、誰でもどんどん意見を言えるような雰囲気づくりを心掛け、積極的に取り入れるようにしています。うまくいっているときは、むしろ当初の自分の想像とは違うおもしろい結果が出るので、チームで仕事をすることはとても楽しいですね。

こうした考え方の幅が広がったのも、一つには育児を経験したからかもしれません。育児では、泣き続ける子どもを何時間でも抱っこしてあやしたり、下の子を背負いながら上の子の面倒をみたり、重たい荷物と子どもを運んだり、人知れず頑張ることが多いと思います。一人で頑張ると追い込まれてしまう感覚も知り、実際に育児をする前は、大変さに対する自分の想像力が足りなかったことを痛感しました。自分の想像力が足りなければ他人の状況や気持ちについて半分も理解できないことを学び、育児という経験を経ることで多様な価値観やライフステージの可能性を感じるようにもなりました。

2019年8月に開催したチームのお疲れ様会での一コマ

いつでもポジティブに、楽しいと感じられるように

仕事に関しては、大学のときに研究していた大好きな自然言語処理を、そのまま今も会社での仕事として取り組むことができているのがとても幸せです。好奇心がわく領域に関わりながら、目の前にある技術的な課題を切り取って商品化していくプロセスにもやりがいを感じています。機械が人間のように言葉を理解することは難しく、自分が生きている間には実現しないかもしれません。5年、10年くらいのスパンで研究し、機械の得意な部分を生かして人間の言葉を理解できるところまで技術を磨き上げていくことで、世の中に役立つものを生み出せればと思います。

自分らしく働くために心掛けているのは、自然体で無理をしないこと。理想の母親像を追い求めて背伸びをしたり、研究者としてかっこよく見せようと無理をすると、育児も仕事も楽しめなくなってしまいます。子どもや家族といるときは、その時間を楽しむ。仕事をするときは、最大のパフォーマンスが出せるよう集中して結果を出す。いつもポジティブに、楽しいと感じられるようにすると、物事がうまく回る気がします。大好きな仕事と仲間、大好きな家族に囲まれている幸せに、日々感謝しながら過ごしています。

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