安心していられる"居場所"をつくるために~ダイバーシティトーク with UDA~

安心していられる"居場所"をつくるために
ダイバーシティトーク with UDA

2019年9月12日、ソニーは東京港区の本社2F大会議場において、社内外のさまざまな方々が集い、共に考え、語る「ダイバーシティトーク with UDA」を開催しました。本イベントは、「プライドハウス東京2019」啓発イベントとして、UDA(University Diversity Alliance)との共催で、日頃あまり接点が無い大学の学生や教職員、企業、団体関係者が、お互いの現状を共有し、安心していられる"居場所"を考える場として企画されました。ソニーは、さまざまな立場の人々がともに考えることで、社会変化や相互作用が生まれ、ダイバーシティ&インクルージョンへの理解が深まると考え、毎年開催している「ダイバーシティウィーク」の一環として、本イベントを共催しました。当日はソニー社員に加えて、企業や大学、団体の関係者など、約400名が参加し、ロバート キャンベルさんによる基調講演とそれに続くパネルディスカッションに熱心に聴き入りました。また、会場での模様は、UDAメンバーである全国各地の5大学のサテライト会場に生中継されました。

ロバート キャンベルさんによる基調講演

第一部は、日本文学研究者で国文学研究資料館長のロバート キャンベルさんによる基調講演が行われました。キャンベルさんは、東京大学で17年間教鞭をとった経験から、日本の大学ではセクシュアル・マイノリティが顕在化されていないと言及。社会の中でセクシュアル・マイノリティが身近にいることを周囲が知り、それぞれが裁量を持って重要な仕事をしていることが見えることが大切であると訴えました。すべての人が生きやすく、一人ひとりがポテンシャルを発揮できる空間を地域や企業、学校、家族の中につくること。そして、LGBT当事者が自分の資質の一つであるセクシュアリティについて周囲に理解され、その現実を安心して伝え合うことができる社会をつくること。この二つに両方向から取り組むべきであると述べました。

また、キャンベルさんは、NHKが2015年にLGBT当事者に対して実施したアンケート調査の結果を提示し、セクシュアル・マイノリティの現実について説明。「結婚相当証明書を申請したい?」との質問に38.8%が「申請したい」、43.6%が「パートナーができたら」と回答し、医療や職場の福利厚生などで家族と同等の扱いを受けたいといった、職や経済に関わる理由が多く寄せられていることを紹介。LGBT当事者が将来への不安や現状への不満を感じていると述べました。「同性間の結婚についてどう考える?」との質問には、65.4%もの人が「同性婚を認めてほしい」と回答。多くのLGBT当事者が、社会的な権利として結婚を平等に認めてほしいと思っていることを訴えました。

続いて、先月パーソル総合研究所から発表された、アジア太平洋地域を対象とした「就業実態と成長意識調査」の結果を提示し、日本における職場の実態について解説。日本は、管理職になりたい人や起業したい人の割合が14の国や地域の中で最も低く、特に若年層の割合が他の国や地域に比べ低かったことに触れ、若者が周りにいる大人たちを見て、企業カルチャーに自分を合わせるように意思を持ち、発言しているのではないかと推察。女性や年下の上司のもとで働くことに抵抗がない人、外国人と一緒に働くことに抵抗がない人の割合についても日本は極めて低く、多様性への受容度が低いことに言及。セクシュアリティもキャリアチョイスに大きく関わることを踏まえたうえで、LGBT当事者がカミングアウトしやすい環境をつくることと、身近にLGBTが存在することを感じ取ってもらうことが必要だと訴えました。

キャンベルさんは自身が同性愛者であることを、大学で指導をする学生や教職員に1対1で話すことはあっても、これまで公表はしていませんでした。しかし、昨年の8月、ある衆議院議員が「LGBTは生産性がない」と雑誌に寄稿したことに対してブログで反論したことがきっかけで、同性愛者であることを明らかにしました。以来、直接指導をしていない学生や、地下鉄に乗り合わせた人、SNSのフォロワーなど、多くの若者から反響があったといいます。キャンベルさんは、日本のセクシュアル・マイノリティは、アメリカなどのように暴力的な差別を受けることは少ないが、カミングアウトを拒む目に見えない圧力を感じており、LGBTが身近にいるという感覚や、LGBTについて話しやすい空間をつくることが非常に重要で、今の日本にはその環境がまだ足りていないことを指摘しました。

最後に、キャンベルさんがこれまでブログなどに投稿した文章を紹介。アンケートでLGBTが「周囲にいない」と答える日本人が多いのは、存在しないのではなく、安心して「いるよ」と言えない社会の仕組みに原因があると綴ったことに触れ、さまざまな平等が確立された多様性を尊重する強い社会へと日本が変わっていくことに期待し、今がそのチャンスであると述べ、講演を締めくくりました。

大学と企業関係者によるパネルディスカッション

第2部では、UDA(University Diversity Alliance)の関係者や企業関係者によるパネルディスカッションが行われ、冒頭、モデレーターの筑波大学 土井裕人さんがパネルディスカッションの主旨を説明。大学ではカミングアウトしていたセクシュアル・マイノリティが、就職を機にクローゼットになってしまうケースがあることを踏まえ、大学や企業といった居場所をテーマにディスカッションをしていきたいと述べました。

登壇者の自己紹介のあと、学生側、企業側からそれぞれが抱える課題を提示。学生側からは、東京大学大学院生でLGBT当事者の学生に対し調査を実施している佐藤遊馬さんが、大学が居場所として機能不全を起こしていると指摘。非当事者としての日常生活と、当事者としてのサークル活動が分断されているため、卒業後に当事者としての居場所を失ってしまうことが問題だと述べました。

また、筑波大学で学生相談を受けている河野禎之さんは、就職活動時のカミングアウトについて悩んでいる学生が多いと指摘。企業の取り組みは見えるものの、個々のLGBT当事者の顔が見えず、大学・企業間でコミュニケーション不足が生じていると述べました。

一方、企業側の課題を提示したのは、freee株式会社の吉村美音さん。当事者の顔が見えないのはもっともで、名乗り出てもらうわけにはいかない現実があることを説明。

ソニー株式会社の人事センター長の望月賢一は、昨秋にLGBT当事者の社員とある大学へ出向いたことに触れ、制度の利用状況や当事者の社会人生活、キャリア形成などリアリティーのある説明をすることで学生の不安を払拭し、大学と企業の接点をつくりたいと述べました。

またリモートで登壇した佛教大学院生のぜんさんは、高校と大学の接点についても言及し、それぞれのステージにリアリティーのあるロールモデルが存在することで、分断された接点をつなぐことができるのではないかと述べました。

また、ソニーの望月は、LGBTに関する無関心層の存在に課題意識を持っていると述べました。吉村さんは、実際にfreeeで実行している活動として、LGBT当事者を特別扱いしないことを紹介。誰もが何らかのマイノリティであり、その中の一つとしてLGBTがあるということを全社員に伝えることで、LGBTを当事者だけの問題にしないようにしていると説明しました。ぜんさんは、一定数いるはずのセクシュアル・マイノリティが顕在化していないため、周囲から存在しないと思われていることを問題視。当事者に特別な対応をしなければならないという考えは捨て、まずは隣にいる人のことを理解する必要があると訴えました。

さらに、これまでの話を踏まえて、各登壇者が「LGBTの課題解決の先にある未来」について発言。大学でダイバーシティや性に関する授業を必修化することでLGBTが周囲に理解され、学業的なパフォーマンスも向上するのではないかという意見や、大学や企業が当事者にとってベストパフォーマンスを出せる場所になれば、大学や企業にもメリットになるという意見が出ました。その一方で、当事者が無理に能力を発揮しなくても「ここにいていい」安心できる場をつくることが必要という意見や、LGBTが当たり前になり、ダイバーシティの研修が不要になることという意見もありました。最後にモデレーターの土井さんが、大学と企業が連携してLGBTの取り組みを次の段階に進めるには、まず現在の状況について知り、身近な人と会話をすることから始める必要があると述べ、ディスカッションを締めくくりました。

登壇者

  • 河野 禎之氏
    筑波大学
  • 佐藤 遊馬氏
    東京大学大学院
  • 吉村 美音氏
    freee株式会社
  • 望月 賢一氏
    ソニー株式会社
  • ぜん氏
    佛教大学大学院(アバターで参加)
  • 土井 裕人氏
    筑波大学(モデレーター)

プライドハウス東京

「プライドハウス東京」は、セクターを超えた団体・個人・企業が連帯し、2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングを契機と捉え、LGBTなどのセクシュアル・マイノリティに関する情報発信を行うプロジェクトです。期間限定のホスピタリティ施設を設置し、多様性に関する様々なイベントやコンテンツの提供を目指します。ソニーは「プライドハウス東京2019」の「居場所づくり」チームに参画しており、本イベントをUDAと共催いたしました。

University Diversity Alliance(UDA)

日本の大学がLGBT等を含むセクシュアル・マイノリティ当事者の学生支援を入口として、すべての学生・教職員がそれぞれの能力を発揮できる場となることを目指すネットワーク・プロジェクトです。2018年から、筑波大学をはじめとしたSOGI/LGBT等に関連した対応を実施している大学間で有志による連携を開始し、2019年6月に正式に発足しました。今後、さまざまな大学や企業・団体・個人とのコミュニケーションを重ね、ネットワークの確立と拡大を目指していきます。

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