Sony Outstanding
Engineer Award 2019

Sony Outstanding Engineer Awardは、エンジニアの新たな挑戦を加速させるために設立した、
ソニーグループにおけるエンジニア個人に与えられる最も価値の高い賞です。
ソニーがお客様の感性に訴える商品・サービスを開発するためにチャレンジすべき技術課題は、
要素技術開発に加えて、独創的な技術の融合や複雑なシステムの最適化など、多様な範囲に及んでいます。
これらチャレンジングな課題に積極的に挑み、大きな価値創造を成し遂げた2019年度の受賞者をその功績とともに紹介します。

光ディスク技術を用いた小型光通信装置SOLISSに
よる宇宙通信インフラ構築への貢献

将来の衛星間や地上との大容量リアルタイムデータ通信の実現を目指し、光ディスク技術を利用した精密指向制御技術により、長距離光通信を可能とする小型光通信装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)を宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発した。研究開発開始から約3年でフライトシステムを開発し、現在「SOLISS」は、国際宇宙ステーション上の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置され、軌道上実証を行っている。

PSD構造を用いたイメージセンサーの
開発と量産化への貢献

近年、裏面照射型CMOSイメージセンサーは、イメージング領域に加えてセンシング領域にも用途が拡大している。この裏面照射型CMOSイメージセンサーのプロセス開発リーダーとして、要素開発から量産開発まで一貫して携わり、開発を牽引した。PSD(Pyramid Surface Diffraction)構造と呼ばれる、フォトダイオードの表面をピラミッド状に形成する世界初の技術開発に成功し、量産化を達成した。本技術は、CMOSイメージセンサーの赤外光感度を従来比で約50%向上し、国際学会IEDMで発表することで、当社製品の競争力訴求にも貢献した。

IMX332断面写真

左右独立型ヘッドホン向け新規デバイス開発と
WF-1000XM3の商品化

左右独立型(TWS)ヘッドホン向け新規デバイスを開発し、ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセットWF-1000XM3に搭載した。このデバイスは左右間でデータをリレー転送する従来方式に代わってBluetoothの左右同時伝送方式を採用し、接続安定性・音声遅延・消費電力性能の大幅な向上を実現した。業界最高クラスの性能を実現したWF-1000XM3は計画の約2倍の売上を達成し、市場でも高評価を受け左右独立型(TWS)ヘッドホンでのベンチマークモデルの一つとなり、ソニーのプレゼンス向上にも大きく貢献した。

車載用CMOSイメージセンサー向け新規画素
アーキテクチャおよび新規プロセスの発案と
その製品化への貢献

ADAS(先進運転支援システム)とAD(自動運転)による成長が期待される車載用CMOSイメージセンサー市場において、時分割による多重露光をコンセプトとする既存のハイダイナミックレンジ(HDR)技術では、LEDのフリッカーや動被写体のアーチファクトに対応できない課題があった。この課題に対し、車載用CMOSイメージセンサー向け新規画素アーキテクチャおよび新規プロセスを発案し、製品化に貢献した。本技術はHDR撮影とLEDフリッカー抑制を同時実現し、月明かりから太陽光下までより広範囲で高精度な認識を可能としている。本技術は、国際学会ISSCC2020にて発表済みである。

※ HDR (High Dynamic Range) 、LFM (LED Flicker Mitigation)

オブジェクトオーディオで実現する新しい音楽体験
「360 Reality Audio」の開発と導入

360 Reality Audio(360RA)で、半世紀以上続いてきたステレオを中心とした音楽鑑賞から、没入感のある立体的な音場を実現する新たな音楽体験を創出した。コンテンツ制作から、音楽配信サービス、スマートフォンアプリ、ヘッドホン再生に至るまでの技術提供を通じて360RAエコシステムを構築。また、アーティストやクリエーターと協業し、オブジェクトベースの空間音響技術で、音源を全天球に自由に配置できる新しい制作手法に取り組み、音楽表現の幅を広げた。更にヘッドホンやスピーカーでも360RAを楽しんでいただける再生環境の実現に貢献している。

光ファイバ式力覚センサを搭載した
精密ロボット鉗子の開発

光ファイバ式力覚センサを搭載した精密ロボット鉗子を開発した。ロボット動作時の力計測ノイズの大幅低減により、極めて透明性の高い世界初の光ファイバ式精密バイラテラル制御システムにすることが可能になった。プロジェクト発足時から携わり、1)医療要件を含む試作機の仕様策定、2)精密ロボット鉗子の開発、3)光ファイバ式歪センサを用いた小型高感度力覚センサの開発を主に担当してきた。繊細な力を感じとりながら微細作業を実施可能な精密マニピュレータの実現に貢献するとともに、本技術の論文発表や各種メディア掲載を通じ、ソニーのプレゼンス向上に寄与している。

※当社調べ

予測分析ソフトウェアPrediction Oneの開発と、
グループ内外への展開

“予測分析”は、実績データに対して機械学習を適用することで、将来の結果を予測するデータ分析手法である。幅広い分野で活用可能だが、高い専門性を要することが導入のハードルとなっている。これを解決するため、高度な予測分析を高速・軽量・自動的に実行する技術と、予測理由を可視化する技術を独自開発し、GUIソフトウェア「Prediction One」として提供した。幅広い分野で予測分析の活用が可能となり、ソニーグループの様々な事業や業種で活用されている。また、社外に対しても2019年6月より提供を開始している。

XDリニアモーターの開発およびEマウントレンズ群に
おけるAF高速化の実現

従来のリニアモーターの構成部品やレイアウトなどを徹底的に見直し、構造を刷新することにより、従来比3倍の推力効率を備えたXD(extreme dynamic)リニアモーターを開発した。また、高速駆動に耐えうる周波数応答特性も確保し、より安定したフォーカス駆動を実現したことにより、競合他社比5倍の動体追従性能、1.5倍速のオートフォーカス(AF)合焦時間を達成した。小型、省電力で機種毎の最適化も容易なため、Eマウントレンズ群に全面的に展開され、システムのAF高速化と交換レンズの小型化に大きく貢献した。

オープンソースコミュニティにおける
ソニーグループ代表としてのリーダー的活躍

25年にわたりLinuxカーネルに関わる活動に従事し、Linux FoundationではEmbedded Linux Conferenceの創設や、様々なコンファレンスで講演を行うなど、8年間、高いリーダーシップを発揮してきた。彼の活動により、ソニーのオープンソースコミュニティへの貢献度が一段と高まり、ソニーの評判に大きく貢献した。Linux Foundationのテクニカルアドバイザリーを務め、2019年に任期満了後、2020年にはLinux Foundationの役員(ボードメンバー)に選出されている。

バーチャル映像制作におけるフォトリアルな
ボリュメトリック画像の作成ソリューション

ボリュメトリックキャプチャ技術を用いて記録したデータを複数選択し、操作やマージを可能にする技術、および、2次元平面上で局所的に行った色補正をリアルタイムに3D表示可能にする技術を開発した。これらの技術により、バーチャル映像の制作やTV、映画、エンタテインメントにおける高画質で実写のようなリアルなシーンを作成可能にするだけでなく、スタジオセットの設置やロケ現場への移動に要する時間を大きく削減できるため、低コストなコンテンツ制作を可能にしており、業界から大きく注目されている。

ボリューメトリック技術「Atom View」が使用されたSony Innovation Studiosによるバーチャル制作のデモ(CES 2020にて)

顔・物体画像認識技術の開発およびaibo、Xperiaへの
商品貢献

エッジデバイス上でリアルタイムに動作する一般物体認識器を開発した。計算量が小さい独自ネットワークを用いて処理負荷を軽減し、ハイスループットと高精度を両立している。また、データ生成の強化により検出のロバスト性を向上し、足だけの画像から人物を検出したり、マスクやサングラスで覆われていても顔検出が可能になっている。aiboでは、「aiboの目」として,飼い主を見つける/おもちゃで遊ぶ/自己充電するなど,aiboの様々な行動のトリガーとして利用されている。Xperiaでは、世界で初めてスマートフォンに瞳AF機能を搭載したほか、動物の瞳AF機能も実現した。

自由視点映像 ボリュメトリックキャプチャ技術の
エンタテインメント向け高画質ワークフロー開発と
実用化貢献

複数のカメラやセンサーの情報を統合し、実在の人物や場所を3次元デジタルデータにして、空間をまるごと撮りこみ、自由視点でリアルタイムに再現できる「ボリュメトリックキャプチャ技術」。今回、従来に比べ遥かに高画質な自由視点映像を、短期間で作成できるワークフローを考案、開発することで、映像制作の可能性を広げることに貢献した。日本国内のトップアーティストのライブ演出映像や、大手企業のCM映像に採用されている。また、エンタテインメント分野だけでなく、スポーツ解析や、教育、医療、建築などへの活用拡大を目指している。

画像を利用した頭部伝達関数の個人化技術の開発と
「360 Reality Audio」への貢献

ヘッドホンにおける立体音場の再現に必要不可欠な頭部伝達関数(HRTF: Head Related Transfer Function)を、スマートフォンによる耳画像の撮影で推定し、個人に最適化する技術を開発した。これにより、多くのユーザに没入感の高い立体的な音場体験の提供が可能となった。ソニーグループを横断するプロジェクト体制のもと、アルゴリズムの考案、コンセプト実証、システム構築、データ収集、性能改善のあらゆるフェーズで、具体的な技術開発を主導し、臨場感あふれる音に包まれる新たな音楽体験「360 Reality Audio」の提供に貢献した。

軽装モーションキャプチャー技術による
エンタテインメント事業への貢献

CGキャラクターの動きを人間らしくリアルに再現するためには人の動きをデジタル化してコンピューターに取り込むモーションキャプチャーが有効であるが、スタジオセットで撮影しなければならず活用にハードルがあった。今回開発した軽装モーションキャプチャーは、身体に装着した少数のセンサー情報から全身の3次元姿勢推定を行う独自技術で、どんな場所でも手軽に使うことが可能になった。イベント来場者に仮想空間でのエンタテインメント体験を提供するなど、ゲームや映画、VR/ARコンテンツのクリエーターとユーザー双方に利便性を提供する。

誰でもその場でキャラクターになりきれる体験を実現
© 2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
© BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

Light Trapping技術導入によるCMOSイメージ
センサーの近赤外感度向上への貢献

裏面照射型CMOSイメージセンサーは、薄いシリコン基板に受光素子を形成するためNIR(近赤外線)波長域の感度/量子効率が低いという課題があった。この課題に対し、シリコン基板の物理的な厚みを増すのではなく、受光素子表面の回折構造と素子分離構造によって入射光を意図的に回折・全反射させて画素内に閉じ込めることで、実効的な光路長を伸ばすアプローチを新たに開拓した。これにより波長850nm~940nm帯域での量子効率が従来センサに比べて約2倍に向上した。本技術は自社他社製品に広く展開され、2019 Walter Kosonocky Awardを受賞している。