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ソニーイメージングギャラリー 銀座

新津保建秀 作品展 アーカイブ / 余白 / 建築

新津保建秀は2000年代前半より、写真というメディアを中心とした表現を通じて、私たちをとりまく新たな自然とも言うべき情報環境と、風景の関係について考察してきた。「アーカイブ / 余白 / 建築」と題する本展は、近年、建築家や美術家などからの要請に応じて撮影した写真群のアーカイブの——とりわけ彼の創作活動において主要な位置を占めてきた建築とその周縁の——画像から構成するものである。

人工物が備えもつ諸要素の微細な挙動を捉えた新津保の風景は、いわゆる「建築写真」に所与の作家性(計画主体の意図)や芸術性(意匠の美意識)から解き放たれ、物質が定着に向けて移行する過渡状況への強固なまなざしに貫かれている。

時間を形象化するかのような目論見は、2012年の写真集『\風景』でひとつの結実を見るが、長期にわたる同書の制作過程において共同作業を行った複雑系科学の研究者・池上高志が、いみじくも「光学的無意識」(『美術手帖』2012年8月号)と評したように、その視座はいまだ私たちが感得しえない知覚の深層へと向けられている。

新津保が捕捉する画像の集積(アーカイブ)は、空間把握の新たな地平を開くものになりうるか——。その一端を供する本展は、建築を対象とした現在計画中の出版物の、スタディの一過程を提示するものである。

新津保しんつぼ 建秀けんしゅう プロフィール

1968年 東京生まれ。映像・写真・フィールドレコーディングによる制作を行う。
自身の作品制作とともに、さまざまなプロジェクトにおける、企業、建築、電子音楽、非線形科学、情報デザインとの共同作業を多く手掛ける。近年の活動として、東浩紀が編集長をつとめる『思想地図β』誌での福島およびチェルノブイリにおける一連のドキュメント、代官山ヒルサイドテラスと周辺地区を継続的に撮影しているプロジェクト《Hillside Scenery》、2014年春にリリースされた池上高志、永井一史、岡瑞起、evalaらと共同制作した、電子書籍『MTMDF』(HAKUHODO DESIGN)などがある。2015年には、近年取組んできた都市空間を捉えた連作の写真集の刊行が予定されている。

新津保建秀 ウェブサイト

グループ展

2014年
「光るグラフィック」展 クリエイションギャラリーG8 東京
2013年
「フクシマへ門をひらく—福島観光地化計画」展 ゲンロン 東京
2012年
Possible Water コモンズとしての未来 ドイツ文化センター 神奈川
2011年
メディア芸術祭ドルトムント展2011 ドルトムントU ドルトムント
2011年
堂島リバービエンナーレ2011 堂島リバーフォーラム 大阪
2011年
第14回文化庁メディア芸術祭 国立新美術館 東京
2007年
リスボン建築トリエンナーレ “Archtectual Tokyo in Photo Photography” Travessa do Carvelho リスボン

個展

2013年
チェルノブイリマテリアルズ オンサンデーズ 東京
2012年
\ 風景+ Hillside Forum 東京
2011年
Spring Ephemeral FOIL gallery 東京
2010年
Rugged TimeScape FOIL gallery 東京(池上高志との共作、第14回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品)
2005年
記憶 Nadiff 東京

作品集

2013年
\ landscape_archive_7.5 角川書店
2012年
\ 風景 角川書店
2011年
Spring Ephemeral FOIL
2008年
GOTH/モリノヨル 角川書店
2005年
夏* マドラ出版
2005年
記憶 FOIL

関連書籍

2013年
思想地図βvol.4:チェルノブイリ・ダークツーリズムガイド
2012年
思想地図βvol.3:日本2.0
2011年
思想地図βvol.2:震災以後
2010年
思想地図βvol.1:ショッピング/パターン
2008年
InterCommunication No.64 音楽/メディア NTT出版
2007年
建築と写真の現在 TNプローブ