ソニーイメージングギャラリー 銀座

須田卓馬 写真展 Fereshteh -13years in Iran-

作品展タイトルにある「Fereshteh」(ファラシュテ)とは、この作品展で須田氏がイランに通いながら13年間撮り続けた少女の名前であり、ペルシャ語で“天使”という意味を持つ。彼女は、アフガニスタン難民であり、イラン北東部のマシュハドという町で家族と暮らしている。
この作品展は、そうしたアフガニスタン難民をレポートした報道色が強いドキュメント作品ではない。展示内容は、愛らしい少女ファラシュテが美しい20歳の女性へと成長する過程を魅力的なポートレートでまとめたものだ。アフガニスタン難民である彼女が置かれている境遇は複雑で厳しいものだ。作品展では、その時々での彼女の心情や家族との関係なども綴られており非常に興味深く作品を見ることができる。

須田氏とファラシュテとの出会いは2003年。須田氏はアフガニスタンへの旅の途中、彼女とその家族が暮らすマシュハドに立ち寄った。ある日の夜、友人と訪れたカフェの前に7歳のファラシュテが体重計を出して座っていた。インドから中近東にかけては、通行人が街頭の体重計で体重を測り、その対価を払う光景をよく目にする。その地域の国々では、花や菓子類を売る子供達がたくさんいるが、彼女もそうした街で働く子供達の一人であり、家計のために体重計で日銭を稼いでいたのである。
カフェから漏れる明かりの中で、ノートを開き熱心に勉強しながら働いていた彼女を見た時、周囲で働くどの子供達よりも気品が漂っていたのだという。
その気品のある少女ファラシュテに須田氏は写真を撮っていいかと話しかける。少女はニコリと笑って承諾してくれた。その日から13年に亘りイランに通いながら彼女の成長の過程を撮影してきたのである。当初、見知らぬ外国人の須田氏を警戒していたファラシュテの父親とも徐々に心理的な距離が狭まり、「ホテルに泊まるならうちに泊まればいい」と声をかけられたのは彼女が12歳の時だった。
作品展では、7歳のあどけない少女だったファラシュテが凛とした気品をもった美しく気品を漂わせた20歳の大人の女性になっていく過程が素晴らしいポートレートとして表現されている。

7歳/カフェの前で居眠りをして小さく丸くなったかわいらしいファラシュテ。

12歳/黒いチャドルを着た俯向き加減のファラシュテ。12歳ながらも女性らしい美しさが漂う。

18歳/スカーフを頭から巻きカメラを見つめ、“ふっ”と微笑むファラシュテ。その眼光に「私は今こうやって生きている」という強さを感じる。

20歳/自信に満ちたファラシュテの魅力的な笑顔。成績優秀だったファラシュテは国からの援助により大学で「都市計画」を勉強している。

作品展について須田氏から次のようなコメントをいただいた。
「アフガニスタン難民の彼女を取り巻く環境は複雑で、厳しいものがあります。でも、そうした政治的なものを意識しないで、ファラシュテの魅力的な姿を「ポートレート作品」として鑑賞していただければと思います。私は写真家として様々な被写体を撮影しますが、“作品として撮りたい”と興味を持った被写体が2003年に出会ったファラシュテであり、たまたま彼女がアフガニスタン難民だったのです。彼女の魅力はただ可愛らしいとか美しいだけではないと思っています。ファラシュテが放つ“力強さ”や“自信”は彼女が置かれた厳しい環境と彼女自身の努力と無関係ではないと思います。その彼女の魅力をぜひ見ていただきと思います。」

須田すだ 卓馬たくま プロフィール

東京出身。学生時代、バックパッカーとして世界を旅し写真にのめり込む。大学卒業後、INDEPENDENT PRESS 所属。ジャーナリスト後藤健二氏に師事。その後、ファッションフォトグラファー Cassio 氏に師事。フリーランスとして独立後、主に雑誌、ウェブなどで人物写真を中心に活動。
2003 年よりライフワークとしてイランに住むアフガニスタン難民の女性、ファラシュテの成長を撮影している。

須田卓馬 ウェブサイト