ソニーイメージングギャラリー 銀座

羽田典子 作品展 脈をつかむ
Capturing a pulse; finding anima

この作品展の被写体は動物園にいる動物や鳥、そして水生動物だが、羽田氏は決して動物の生態を撮っているのではない。動物は表現上のモチーフ(題材)であり、いわゆる“動物写真”とは全く異質のものである。彼らがある瞬間見せる表情や姿、そして人間社会を思わせるような行動の一瞬を羽田氏の世界観で切り取った作品は非常に興味深い視点で生き物を捉えている。
例えば、ヒツジをポートレート風に撮影した作品は、その顔が不思議にも人間味に溢れており、つい頬が緩む。また、3頭のシマウマの後ろ姿には、私たちを取り巻く人間社会をふと垣間見るようなシリアスさを感じ、哀愁を帯びた何か物悲しい雰囲気を漂わせている。そして、羽根を広げたクジャクを敢えて後ろから撮影した作品は、自然が産んだ造形美に誰もが息を呑むだろう。この作品展では、これまでとは全く違った視点で捉えた生き物たちの姿を深く、そして楽しみながら味わえる。

各作品を撮影する上で重要な共通点がある。それは“定点観測”だ。つまり、より良い撮影地を探し求めたり、被写体の周囲を動き回りより良い撮影ポイントから撮影したのではなく、ある位置から動かずに被写体の動きや造形的な美しさなどを時間をかけて観察し、構成を練りながら作品へと仕上げているのである。それには理由がある。
実は羽田氏は以前、病のため体の自由が効かない時期があった。療養中のリハビリを兼ねて行ける場所の一つに近所の動物園があった。
「定点観測をするように動物園で週に何度も動物を見ていたところ、歩くことすら精一杯の自分が長い時間動かずに生き物たちを見ているからこそ見えてくる景色がある。つまり、今まで気付かなかった動物の見え方や自分の世界観を刺激するしぐさ、美しいと感じるオブジェ的な魅力があることに、ぼんやりとだが気付きはじめた。そしていつしか自分が定点にいて相手の動きをじっとじっと見て捉えることで、その最たる魅力を見つけることができるようになっていった。そのことが現在の視点にも繋がっている。」

作品展タイトル「脈をつかむ」は、合気道のある流派で極意として用いられる言葉で、大意としては相手の急所を捉えるという意味である。それは羽田氏が被写体の急所(作品の要となるもの)を捉えることに通じることからつけたタイトルである。

この作品展は、一点一点の作品から様々なメッセージを受け取れると同時に、純粋に生き物たちの愛らしい表情や美しさも堪能することができる。

羽田はだ 典子のりこ プロフィール

愛知県生まれ。広告制作会社で映像の制作に携わった後、独学で写真を撮り始める。
今回ソニーイメージングギャラリー 銀座で開催する作品展でフォトグラファーとして始動。

羽田典子 ウェブサイト