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ソニーイメージングギャラリー 銀座

高縄奈々 作品展 Tokyo Dolphins -東京の島のイルカたち-

今回の作品の撮影地である御蔵島(みくらしま)と利島(としま)は東京都の伊豆諸島に属する小さな離島である。両島とも人口は約300人、交通機関は船とヘリコミューターのみ、島内にはコンビニもなければ信号機もない。
外洋に向かって突き出しただけの桟橋は波や潮流の影響を強く受け、船の就航が阻まれることも決して珍しくはない。

その島の周りに私の心を掴んで離さない、ミナミハンドウイルカたちが暮らしている。
彼らは完全な野生であるにもかかわらず、人をあまり恐れないため水中で観察することができる。
イルカに触ってはいけないことや無理に追いかけないことなどがルールで決められているが、水面で静かに浮いているだけでもじゅうぶん間近でイルカを見ることができる。
また伊豆諸島は温暖で透明度の高い「黒潮」の流路に位置するため、夏には水温が29度、透明度は30mを超えることもある。御蔵島と利島はフレンドリーなイルカたちがいるというだけではなく、私たちが泳ぐのに適した水温と水中を見渡せる透明度という好条件が揃った世界的に見ても珍しい島なのだ。

そしてこれらの島は、東京都心からそう遠くない場所にある。
暖かく綺麗な海で野生のイルカと泳ぐなんて、遥か遠くの国でなければ叶わないと思ってはいないだろうか。
また、都会の私たちの暮らしは、このイルカたちの暮らしと無関係だとは思っていないだろうか。

意外と身近な場所にある、奇跡のような自然が残る島とそこで暮らすイルカたちの存在を、日本最大の都市・東京で暮らす人々にこそ知っていてほしい。

高縄たかなわ 奈々なな プロフィール

幼少時に水族館で出会ったイルカに魅せられ調教師を目指し上京するが、2002年に御蔵島で調査ボランティアとして野生のイルカと泳ぐ体験をし、野生の鯨類の虜となる。専門学校卒業後の2004年に御蔵島へ移住、ドルフィンスイムツアーのガイドをしながら独学で水中写真をはじめる。現在は愛知県を拠点に野生のイルカ・クジラの撮影を継続、映像はテレビ、雑誌など各種メディアに提供している。
2016年7月に電子書籍写真集「Dolphin Eyes あるイルカの島の物語」を発表。