ソニーイメージングギャラリー 銀座

松龍 作品展 宙と墨(そらとすみ)

写っているものが“曇天”と“電線”だと聞いて、驚かない人はいないのではないか。
広大な宙(そら)を縦横無尽に走り、躍り、跳ねる電線は筆勢盛んな墨跡のようであり、まさに墨痕淋漓(ぼっこんりんり)とした前衛書道のようである。

「電線は宙を走るアートだ。それは、硬筆で丁寧に書かれた一本の線であったり、あるいは毛筆による墨象(前衛書道)でもある。」と松龍氏。
ある日、松龍氏は曇天に走る何本もの電線を見た瞬間、それをモチーフに“前衛書道”的な要素を取り入れたアート性の高い作品にすることができるのではないかと閃いた。前衛書道家の“書”を丹念に見つめ、それが持つ味わいや表現を研究し作品に生かしたのである。

しかし、最初はただ曇天に電線が写っているだけの写真でしかなかった。何百枚も撮影を繰り返し、様々に工夫を凝らすことで、毛筆特有の“跳ね”や“かすれ”などが表現できる方法を編み出したのだ。たとえば、電線をシャープに撮影した画像とピントをずらした画像や低速シャッターでブラした画像などをデジタル的に合成することで、墨跡らしい表現を可能にしたのである。

被写体は“曇天”と“電線”。イメージに合った電線を探して歩きまわった。街並みが整備された新興住宅地よりも、昔からある古くてごちゃごちゃとした住宅地のほうがイメージを刺激する“電線”を見つけやすいのだ。また、電線には様々な表情がある。それは、電気工事業者により電線の巻き方や処理の仕方が違うからである。例えば几帳面にきっちりと巻かれたものもあれば、ラフに巻いてあり途中で電線が切れて垂れ下がっているものなど様々で、後者はより“書”の世界を連想させてくれた。

作品展には電線をモチーフにした作品の他に前衛書道家である奥平野牛氏の“書”を部分的に写し取った作品も展示している。奥平野牛氏は松龍氏の友人のお父様であり作品をつくる上で様々に影響を受けた。

ひと時、“電線”と“書”の混沌とした世界に迷い込んでいただきたい。

松龍まつりゅう プロフィール

1964年東京生まれ。ITエンジニアをしながら、作家活動、講師活動をしているアーティスト。Charles Robert Darwin、長谷川真理子らに哲学的影響を受け、Michael Kenna、Robert Mapplethorpeらに写真家として影響を受け、テラウチマサト、神島美明、高崎勉らから直接指導を受けた。
人類が美を認知する知性を獲得したのは、36億年間生存競争をして進化した結果だと私は考えている。これは人が安全を感じたり他者に共感したりする能力の拡張だと私は考えるに至っている。
これらから「くうをみる」「世界の始まり」「宙と墨」という作品シリーズを制作してきた。人に「美」という概念が存在する理由を追い続けて作品を発表していこうと思っている。

Awards

2012年
FUJIFILM Photo Contest Photobook入選
2015年
  • 御苗場「来場者が選ぶ私の一点賞」第3位
  • 御苗場「横浜市長賞グループ賞」ノミネート
2016年
  • 御苗場「来場者が選ぶ私の一点賞」第2位
  • PICTORICO PHOTO CONTEST 秀作
2017年
御苗場「来場者が選ぶ私の一点賞」第4位

作品シリーズ

  • くうをみる
  • 世界の始まり
  • 宙と墨

松龍 ウェブサイト