ソニーイメージングギャラリー 銀座

幡野広志 作品展 優しい写真

いい写真ってなんだろうとずっと考えていた。

伝えたい人に、伝えたいことが伝わる写真が、いい写真の一つなのだと、
最近になってようやく、ぼくなりの答えをだすことができた。

最近なにがあったかというと、ガンになった。
あと数年は生きられるけど、治る見込みはない。

こういうことを言うと、奇跡がおきると励ましてくる人がいるけど、
1%の希望に目を向けるなら、どうじに99%のリスクを受け入れたほうがいい。

ぼくには2歳の優(ゆう)という名前のウルトラかわいい息子がいる。
息子は父親の記憶がほとんどない人生を歩んでいくことになる可能性が高い。
だけどそれは可哀想なことでも不幸なことでもない、
ぼくも息子も与えられた条件のなかで生きているだけだ。

ただ、息子にはぼくの気持ちが伝わってほしい。
けっして優くんのことが嫌いでお父さんはいなくなったわけじゃない。

ぼくは息子のことを愛していた事実を伝えるために、写真を撮っている。
君に伝えたい、ただそれだけだ。

ちゃんと伝わるだろうか。
すこし心配だけど死んだあとの心配をしても仕方がないし、
きっと妻がうまくフォローしてくれる。

どういう仕組みなのかよくわからないけど、
カメラのシャッターを押すと一瞬で写真として記録される。
いい写真の答えを出すのがすこし遅かった気もするけど、
間に合わなかったわけじゃない、死ぬちょくぜんまで写真は撮れる。

写真を撮る人生を選んでよかったとおもうけど、
きっと違う人生を選んでいてもよかったと感じているとおもう。
健康なときよりも充実した日々を過ごしている。
生きていて、本当に良かったとおもう。

幡野はたの 広志ひろし プロフィール

1983年東京生まれ。2004年日本写真芸術専門学校中退。2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事し、同年「海上遺跡」でNikon Juna21受賞。 2011年に独立し結婚する。2012年エプソンフォトグランプリ入賞。2016年に長男が誕生。2017年多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。著書『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)。