ソニーイメージングギャラリー 銀座

金城拓 作品展 Southern Breath

沖縄を訪れる観光客は、年々増加している。その人気は国内だけでなく海外からも多くの人々が訪れる。観光客の増加は、沖縄の経済に大きく貢献しており、観光開発が各地で行われインフラも整備された。
それと同時に 、ほのぼのとした沖縄らしい温もりが希薄になっていると感じたのは金城 拓氏が東京からUターンし那覇市にある映像メディア関連の会社に就職した2017年だった。

“那覇国際通り商店街”は、沖縄観光の玄関口として人気のスポットだ。多くの観光客が闊歩する光景は今も昔も変わらない。通りは整備され華やかになった。それは時代の流れであり、沖縄の観光地はどこも同じだ。
金城氏が覚えた違和感、それは 沖縄を離れる以前にはあった、大らかな沖縄らしい風土の喪失だ。日陰で涼んでいるおじさんが道行く人々に気さくに話しかけるのは、暑い中歩いている人を思いやる気持ちの表れだし、周囲に対するやさしさや温かな眼差しは、人だけでなくすべての命ある生き物に対しても向けられる。観光開発により効率が求められるようになり、気ぜわしくなった今、そういう心の交流がだんだんと消えているように感じると金城氏は言う。

変わったのは那覇市だけではない。周辺の地域も観光振興の名の下に、厚化粧をしているように思えると金城氏。そして、次のように続けた。
「沖縄は昔と大きく変貌しました。それは時流ですから仕方のないことです。でも、実は、よく見ると沖縄を離れる前に感じていた沖縄らしい“温もりのある大らかさ”や“あの頃の空気感”が街のところどころにまだ転がっています。それは僕にとって、とても懐かしくて大切な風景です。だから、それが消えないうちに、たくさんカメラに収めたいのです」

金城氏が大切に拾い集めた作品からは、飾らない沖縄の素顔が見える。

『工事関係者以外、立入禁止』と書かれた看板の前で一杯ひっかけたおじさんが気持ちよさそうに蛇味線をつまびいている。別の作品では、蓋の開いた電気炊飯器が通りに無造作に置かれていて、その中になぜかしなびた白菜が放り込まれている。
それらの作品を指しながら、「こういう光景が本当に沖縄らしいなと思います。南国らしい唐突な光景を、かつて住んでいた東京では見たことがないです。しかも、店先なのに誰も片付けない。僕はこういう沖縄らしい、いい意味での大雑把さが好きなんです」と笑った。
金城氏が、拾い集めた少し肩の力が抜けた素顔の沖縄をぜひご覧いただきたい。きっと、青い海と白い砂浜という沖縄のイメージとは違った沖縄を感じることができるだろう。

金城 拓 (きんじょうたく)

沖縄県那覇市首里出身。
沖縄県立高校卒業、東京の映像専門学校で映像制作を学び、その後、帰省し沖縄を撮り始める。