ソニーイメージングギャラリー 銀座

宮田裕介 作品展 山と花と時々、ねこ。

ラダック地方と呼ばれる山深いヒマラヤの奥地を旅していた時、
小さな山村で日本語を話す不思議な女の子に出会った。
聞けば母親は日本人なのだと言う。
子どもは正直苦手だったが、覚束ない足で荒野を歩き回る姿にハラハラしてつい手を引いた。

日本に帰ってからもどこか気にかかり、
気が付くとまたこの村を訪ねていた。
そんなことを繰り返し、次第に家族のように生活するようになって七年。
あの時の小さな女の子は二人の弟妹の面倒を良く見る優しいお姉ちゃんになった。
そして私は彼女たちの年の離れた兄になっていた。
ある日、子どもたちと戯れる私を見て母親が言った。
「あなたも成長した。」 何の事かと聞き返すと、
「昔はどこか苛立ち、何かに焦って生きている感じがした。遠くばかり見つめていて、そんな風にじっと同じ場所に留まり、子どもたちと楽しそうに遊んだりはしなかった。」と。

賞や名声、お金。
野心に駆られ時間への焦燥に生きていたかつての私が今の私や私の作品を見たらどう思うだろうか。
でもわかって欲しい。
人を遠ざけ孤独に生きてまで得るほどの価値はそこにないのだと。
そして写真の中に映っている隠せない自分の本性、こんな優しさがある事を。

今作品展では作者自身が作品の背景となるラダック地方に伝わる古くからの民謡や宗教音楽などから影響を受け作曲した音楽作品をBGMとして使用する。

宮田裕介(みやた ゆうすけ)プロフィール

群馬県高崎市出身。写真家/音楽クリエイター。
音楽アーティストを志し、17歳で単身渡米。
民族音楽に強い興味を持ち、世界各地を旅する中で写真表現に出会う。

  • リリース/音楽作品 LADAKH: Breath Of The Himalaya(2015)
  • コレクション/清里フォトアートミュージアム(2017)