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English ソニーイメージングギャラリー 銀座

山中 南実 作品展 andante

いま肌で感じることのできる⾵とこれから吹く⾵は違ったもので、明⽇⾒る草⽊は今⽇よりも少し変化しているだろう。外形が似ていても、この瞬間と同⼀のものにはもう触れることができない。⽇々移ろいゆく事象に⽬を向け写真におさめることで少しでもつなぎとめておけるだろうか。せわしない⽇々を送るなかで、わたしたちの⽣の感覚は徐々に希薄になっていく。鈍くなりかけたままある種の切実さをもって撮影を重ねていたが、数年間続けることで⾒えてきたのは、太陽の動きや⾃然の移ろいといった⾝近な事象はどんなときも変わらず存在し続けていることだった。朝になれば⽇が昇り、陽に当たればあたたかい。⼤きく息を吸い込むことで花から葉になるときの⻘さを感じることができる。⾝近にあるけれど⾒落としてしまいがちなこれらを⾒つめることによって、⽣の感覚との距離も縮まっていく。わたしたちを取り巻く⼤きな⾃然の⼒、地球の輪郭はすべてがそこに確かさをもってただ存在している。わずかに移ろいゆく変わらないものたちへ瞬間的に反応し写真に収めていく。タイトルの「andante」は“歩くくらいの速さで”という意味の⾳楽⽤語である。

山中 南実(やまなか みなみ)プロフィール

1997年東京生まれ。2019年日本写真芸術専門学校卒業。2021年春にオープンした自主ギャラリー「Koma gallery」の設立メンバー。Alt_Mediumでの「andante」(2019)や、Koma galleryで定期的に個展を開催。「日常生活における自然現象の存在や仕組み」をテーマに写真作品を制作している。主な作品に、土地そのものがもつ自然のあり方と人々の営みに着目した「今日の花を摘む」、数千万年という時間をかけて石が変化していく道筋を辿り自然と人の時間を見つめる「地球のかけら」などがある。