SONY

English ソニーイメージングギャラリー 銀座

九州産業大学大学院 芸術研究科 造形表現専攻 写真・映像領域 作品展 Prism

 プリズムとは、光を分散、屈折させるための光学素子のこと。プリズムに光を当てると波長ごとに赤、青、紫など様々な色の光の帯が現れます。私たちはカメラという道具を使ってこのプリズムのように、皆見ているものが同じ世界にもかかわらず様々な捉え方をし、様々な表現をしています。

 本展は九州産業大学大学院 芸術研究科 造形表現専攻に在籍する7名の学生による写真展です。広い視野を持って世界を捉える/一つの場所や物体に固執して撮る/現実の世界には現れないものを写そうとする__など表現は様々です。

 この7名の学生が表す世界をご覧になる皆様も自由な解釈をし、存分にお楽しみください。

Itinerant
丁 柯元 DING KEYUAN

中国 山東省出身

展示歴

2023年
「180秒・私の目から逃げた光」福岡アジア美術館
「Between all of the worlds」福岡市美術館
「海に生きる島」福岡市美術館
「沂河の夏」福岡アジア美術館
2024年
「Vague days」福岡市美術館

 写真に写るダムには自然の要素と人工的な建造物の融合が見られ、人間と自然環境の相互作用的な関係が現れていると感じた。Itinerantには3つの概念が含まれている、時間と空間の反復、人間の循環性、そして流動と変化だ。

 時間と空間の反復:同じ場所を定期的に撮影して変化を記録したり、異なる場合や同じ被写体を撮影したりする。この行動は時間の経過と自然の循環を反映し、環境が被写体に与える影響を示すものだ。

 人間の循環性:この循環性は撮影においてだけでなく、人間の行動の周期性や反復性にも現れている。人々は常に異なる時間と場所で似たような活動を行っており、この行動は歴史を通じて存在し、人間の行動の絶え間ない再演を反映している。

 流動と変化: ダム湖の流れる水は自然界の流動的な変化を象徴しているが、撮影者としての私にとってダイナミック(力強く印象的)な時間の中で景色の変化を捉えた。

カタログ
凌 雯婷 LING WENTING

中国江西省出身

展示歴

2023年
「共生」福岡市美術館
「糸」福岡アジア美術館

 私は目的もなくカメラを持って、妄想し、街、建物、人々の中に宿る生命力を感じる部分を探してみることにした。その姿はまるで未知のジャングルに足を踏み入れた写真家のように、彼らに宿る生き生きとしているモノを探していた。

 撮影した写真を通して彼らの「習性」を知り、世界を感知するカタログを作った。この方法で身の回りに点在する“知らない”環境への恐怖心を解消していった。

This could be a window
劉 志禹 LIU ZHI YU

中国江蘇省出身

展示歴

2023年
「これは窓じゃなくて」福岡アジア美術館
「フラフラ」福岡市美術館
「What do you see」福岡アジア美術館

 私は写真展を見るとき、大抵二つの切り口からアプローチをする、それは写真の内容と文章による解説だ。ほとんどの場合私たちは写真を信じると思う。なぜなら私たちは、写真は現実の瞬間を切り取ったものであり、現実を象徴するものだと単純に思い込んでいるからだ。

 しかし残念なことに、物事の成り立ちには複雑な時と空間の関係があり、ある時点での事象を抽出したときに公平性、客観性を保つことは難しいのだ。私は写真が持つその曖昧さを捨てた“真実”の窓を写そうと考えた。

時間・記憶
唐 紫云 TAN GZIYUN

中国上海出身

展示歴

2023年
「A flash is an eternity」福岡アジア美術館
「END」福岡市美術館
「流失2」福岡アジア美術館

 私の故郷、上海は目まぐるしい速度で急速に発展している。

 私は日本に移り住んで今年で8年目だ、その間故郷では私の家以外の全てのものは変わり、ここに何があったのかもうわからなくなっている。

 今この町の持つ“知らない”という情報は私に恐怖を与える。

 そこで私は故郷を、いつしかまた消えてしまいそうなこの土地に「時代の変化は私たちの背中を押して一方的に前に進み、消えたモノは永遠に記憶の中に存在する。」という言葉をテーマに持ち制作した。

Divinus
王 弈韜 WANG YITAO

中国江蘇省出身

展示歴

2023年
「墓石」福岡アジア美術館
「gap day」福岡市美術館
「火を囲んで」福岡アジア美術館
2024年
「of wind Hibiki」福岡市美術館

なぜ木の写真を撮るのか。

木は生命体で、動かないが生きている。

木はどこにでも存在し、様々な形状をしている。

木は生物と共存し、この“世界”の特性があると私は考える。

木は無口であり、美しいと感じた。

はるかなる影
白石 尚己 NAOKI SHIRAISHI

福岡県出身

展示歴

2022年
「Newgraphy Fukuoka art book EXPO2022」 OVER GROUND / 福岡
2023年
「天国の貧乏人たち(Heaven’s poor peoples)」福岡市美術館

 まるで鏡を見ているような感覚に陥った、長い光の筋が回りながら暗闇の中を横切り、どこまでも伸び続ける音に僕は鏡から目が離せない。

 目の前に現れる人たちは影や光線で溢れていた、名もない僕は自らの存在を忘れる。

石の記憶
鄧名傑 DEMG MINE JIE

台湾 高雄市出身

展示歴

2023年
「心の窓」福岡アジア美術館
「命のように」福岡アジア美術館

 澎湖(ほうこ)の石と岩には年月の痕跡が刻まれており、古代から伝わる石造りの村を見ることができる。
 この島では昔の漁師が烏心石と珊瑚石を利用してハート型の「石滬(せきし)」を形成し、潮を利用した漁が現在も行われている。

 それぞれの石の家には独特の質感と色彩があり、それらの石を見ていると物語を読んでいる気分になる。その一つ一つのくぼみや線には、日記のように、過去から現在までの人々の生活を記録し続けているように感じた。

撮影場所 台湾 澎湖県