English ソニーイメージングギャラリー 銀座

© Yoshinori Nishino
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第14回公募セレクション作品 西野 嘉憲 作品展 島に根を張る 石垣島上由台灣人墾殖的村莊

戦前の沖縄県石垣島では、日本領であった台湾から1000人規模の移住がありました。逆に日本からは沖縄県出身者を含む2万人以上が台湾へ住まいを移していました。しかし、その往来は1945年の日本の敗戦によって途絶します。石垣島に残った台湾出身者はその時点から「外国人」として扱われ、逆境のなかの生活がはじまります。彼らは移住初期におきた島人との争乱や、戦後しばらくまで続いた差別などに歯を食いしばりました。

この作品展でご覧いただく写真は、台湾人入植者が戦後、石垣島に築いた集落の日常です。

彼らは島人が見向きもしなかったジャングルに分け入り、荒土に鍬を立て、台湾から移入したパイナップルの栽培と加工によって人生を切り拓きました。苦心の末に島人と融和し、日本国籍を取得したのは1964年から1970年代のこと。

石垣島の中心に今、あたり前のようにあるこの集落の農村風景は、半世紀をかけて築き上げたものです。台湾人が拓いた嵩田集落は、その後、周辺の離島や沖縄本島、日本本土からの移住者が加わり、島随一の農業地域として発展を遂げています。

戦後80年。先の戦時下で国境にさらされた地域の混乱や、国籍に絡む民族的な悲劇は、いまも日本社会の重い課題として多くが残されたままとなっています。

しかし、嵩田集落の台湾系住民は「華僑共同体から自立しつつ、農業者として地域社会と完全に融和し、発展を遂げた稀有な存在」であると、集落を訪れた研究者は言います。

開拓者の汗と涙がにじむ過去を、彼らは簡単には口にしません。私はその誇りに胸を衝かれ、シャッターを切ります。

西野嘉憲(にしの よしのり)プロフィール

1969年大阪府生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、東京の広告制作会社勤務を経て、2005年より沖縄県石垣島在住。漁撈、狩猟、捕鯨など、人と野生の関わりを写真の主なテーマとして日本各地で取材を続ける。一方で、現在の住まいがある石垣島嵩田集落の日常を30年余り写しとってきた。

受賞歴

2019年
日経ナショナルジオグラフィック写真賞2018 ピープル部門・最優秀賞
2022年
第5回笹本恒子写真賞
2023年
フォトシティさがみはら2023 さがみはら写真新人奨励賞

主な展覧会

2005年
『石垣島 海人シンカ』キヤノンギャラリー
2010年
『海人』キヤノンギャラリー
2018年
『房州捕鯨』太地町立石垣記念館
2019年
『海人三郎』キヤノンギャラリー
2022年
「熊を撃つ』オリンパスギャラリー東京
2022年
『狩りたてるもの』アイデムフォトギャラリー 「シリウス」

写真集

2017年
『鯨と生きる』 平凡社
2019年
『海人─八重山の海を歩く』 平凡社
2022年
『熊を撃つ』 閑人堂
2025年
『島に根を張る─石垣島上由台灣人墾殖的村莊』 立夏書房