English ソニーイメージングギャラリー 銀座

© Kino Seido
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紀 成道 作品展
かぜとつちと
Presented by Sony World Photography Awards

日本語でいう「風土」にあたる英単語が存在しないらしい。代わりに示されるのはクライメット、エンバイロメント……。それではどこか腑に落ちない。自然環境にも人間社会にも当てはめられる便利なこの言葉にひそむ綾。緻密なのか曖昧なのか。いや、緻密なものをうまく曖昧にまとめていると解釈できるだろう。日本に住まう人々が抱く自然観を表しているだけかもしれない。

この国は海に囲まれ風雨にさらされることにより、湿潤で肥沃である反面、災害も頻発する。自然をコントロールする志向よりも、コミュニケーションの相手とする方が、理にかなっていたはずだ。自然もヒトも不可分で互いが世界の構成要素として対等であることに始まり、折り合いをつける両者の複雑な関係性が「風土」に織り込まれている。島根ではたたら製鉄と稲作に象徴される営みがそれを物語っていた。環境が人間を育むのか、人間が環境を育むのか、なんて問いは風土という概念が押し返してしまう。

よそ者である私は、島根が織りなす風土の表面を無邪気に駆けまわるだけでなく、綻びに見えるところへくぐり込んだり、その内側で絡め取られたりもした。例えばそう、平面的な紙や布地を顕微鏡でのぞくと実は起伏が激しい立体物であることに気づくような好奇心や冒険心でもって、地域の魅力と課題を記録していった。そして、どこから光が当たるとその綾が浮かび上がるのか思案する。

紀 成道

紀 成道(きの せいどう)プロフィール

1978年、愛知県生まれ。「接点」をテーマに日本を撮影するドキュメンタリー写真家。2025年に「The Strata of Time」でSony World Photography Awards プロフェッショナル部門ランドスケープカテゴリー1位、「風と土と x elements / Earth」で第49回伊奈信男賞を受賞。写真集に『かぜとつちと x elements』、『MOTHER』、『Touch the forest, touched by the forest.』(いずれも赤々舎)がある。活動拠点は京都と東京。