Presented by Sony World Photography Awards
- 会期
- 2025年10月31日(金)~11月6日(木) 11:00~19:00
ソニーワールドフォトグラフィーアワードは、写真文化の継続的な発展を目的に、2007年よりソニーが支援する世界最大級の写真コンテストです。
「プロフェッショナル(組写真・10カテゴリー)」「一般公募(単写真・10カテゴリー)」「ユース(単写真・19歳以下)」「学生(組写真)」の4部門を設け、幅広いキャリアやジャンルに応じた発表の場を提供しています。さらに、写真文化に大きな貢献を果たした個人や団体を讃える特別功労賞や、各国・地域ごとに優秀作品を選出するナショナルアワードも実施しています。
今年で18回目を迎える本アワードは、新進気鋭の写真家から既にキャリアを築いた写真家まで広く世界に認知され、飛躍のきっかけをつかむ場として発展してきました。
本展では、Sony World Photography Awards 2025プロフェッショナル部門〈ランドスケープ〉で1位を受賞した 紀 成道 氏の作品をご紹介します。











日本語でいう「風土」にあたる英単語が存在しないらしい。代わりに示されるのはクライメット、エンバイロメント……。それではどこか腑に落ちない。自然環境にも人間社会にも当てはめられる便利なこの言葉にひそむ綾。緻密なのか曖昧なのか。いや、緻密なものをうまく曖昧にまとめていると解釈できるだろう。日本に住まう人々が抱く自然観を表しているだけかもしれない。
この国は海に囲まれ風雨にさらされることにより、湿潤で肥沃である反面、災害も頻発する。自然をコントロールする志向よりも、コミュニケーションの相手とする方が、理にかなっていたはずだ。自然もヒトも不可分で互いが世界の構成要素として対等であることに始まり、折り合いをつける両者の複雑な関係性が「風土」に織り込まれている。島根ではたたら製鉄と稲作に象徴される営みがそれを物語っていた。環境が人間を育むのか、人間が環境を育むのか、なんて問いは風土という概念が押し返してしまう。
よそ者である私は、島根が織りなす風土の表面を無邪気に駆けまわるだけでなく、綻びに見えるところへくぐり込んだり、その内側で絡め取られたりもした。例えばそう、平面的な紙や布地を顕微鏡でのぞくと実は起伏が激しい立体物であることに気づくような好奇心や冒険心でもって、地域の魅力と課題を記録していった。そして、どこから光が当たるとその綾が浮かび上がるのか思案する。
紀 成道