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日本大学芸術学部写真学科 教員作品展

日本大学芸術学部写真学科 教員作品展 SKY VIII 田中里実/服部一人/小池雄之/八木元春

田中 里美(たなか さとみ) プロフィール

1960年石川県生まれ。
航空自衛隊航空学生、一般企業勤務などを経て40歳を過ぎてから日本大学
芸術学部写真学科に入学。同校大学院を経て、現在日本大学教授として勤務。
大学では写真の基礎を中心に指導を行っている。自身の研究テーマとして
「19世紀初期写真技法」の研究を行うと同時に、それらの技法を現代写真表現
に活かせる方法論を研究、そして作品制作に取り組み、さらに写真の記録性を
重視し、8×10インチの大型カメラから35ミリカメラまで使用して銀塩黒白
写真を用いた制作も行なっている。

公益社団法人 日本写真協会会員、日本写真学会理事、
日本写真芸術学会理事

田中里美作品
田中里美作品
田中里美作品

35×35 写真史の旅2

今から10年ほど前に、約3ヶ月間欧米諸国を巡る機会をいただきました。大学在学中から写真史に興味を抱き、その頃から史料に添付されている写真を見る度に、一度その歴史的な場所を実際に訪ねてみたいと思っていたのです。その思いを実現できる喜びと共にアメリカのニューヨーク州ロチェスターを皮切りに欧米6カ国12都市を巡ってきました。
この旅で持参したカメラはフィルムカメラとデジタルカメラ1台ずつです。いずれのカメラもレンズは35mmの単焦点レンズだけを装着し、主にフィルムカメラで撮影し、デジタルカメラはバックアップとして撮影していました。展示写真はそのフィルムカメラと35mmレンズの組み合わせで撮影したものだけを展示しています。
フィルムは主なメーカーの35mmフィルム5種類、合計80本を日本で用意し各地を巡り撮影し、現地でフィルムを入手せず荷物になっても日本で用意し持参したのは、空港での手荷物検査によるX線がフィルムにどれほど影響するか実験してみようと思ったからです。撮影したフィルムが全て使い物にならなくなる覚悟で、機材用のバッグの中に入れ検査機に通しました。その回数は合計14回です。その結果、このようにプリントが可能なネガを得られたことにはちょっと驚きました。
また、一台のカメラと同じレンズだけで撮影し作品に仕上げることは、試みたいテーマの一つだったのです。それは学生時代にアジェという写真家を知った時からです。アジェは生涯180mmのレンズ一本だけで撮影した人でした。そんなアジェに憧れた私の思いも込めた作品です。

田中 里実

服部 一人(はっとり かずと) プロフィール

1961年名古屋生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。(株)日本デザインセンター勤務の後、独立行政法人国際協力機構(JICA) により、ケニア国立ナイロビ博物館、タイ チェンマイ山岳民族博物館、アユタヤ歴史研究センターに派遣。帰国後、東京をベースにフリーランスフォトグラファーの後、現在は日本大学教授(芸術学部写真学科) 日本写真芸術学会理事

【主な写真展】

2025年
「パノラマ・東京・ミレニアム」ギャラリーストークス(東京)
2022年
「6×6 Portraits」ギャラリーストークス(東京)
2021年
「初めての旅」ギャラリーストークス(東京)
2020年
「Days in Africa」ギャラリーストークス(東京)
2019年
「駅•雑踏•トラム」ソニーイメージングギャラリー(東京)

【主なグループ展】

2024年
「Railway」ギャラリーストークス(東京)
2023年
「SKY Ⅵ」ソニーイメージングギャラリー(東京)
2023年
「わたしのともだち ~ 写真家と愛しい存在の物語 ~ Part3」ソニーイメージングギャラリー(東京)
2022年
「Railway」ギャラリーストークス(東京)
2020年
「SKY Ⅲ」ソニーイメージングギャラリー(東京)

【出版物】

2022年
「6×6 Portraits」クスクスパブリッシング(東京)
2021年
「初めての旅」クスクスパブリッシング(東京)

小池 雄之(こいけ ゆうし) プロフィール

1991年埼玉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。幼い頃から写真に興味を持ち中学時代にデジタル一眼レフを買い与えて貰ったのをきっかけに本格的に写真撮影を始める。日本大学芸術学部写真学科卒業後、広告制作会社でレタッチャーとして勤務。退社後、株式会社ピクトリコ(現三菱王子紙販売株式会社)に勤務。ピクトリコではプリントチーフとして、美術館や作品展の様々な作品に携わった他、 用紙開発などにも関わる。
退社後に独立し総合クリエーターとして、 インクジェットプリント、画像レタッチ、動画編集作成、企画に携わる。 2025年より日本大学芸術学部 写真学科 助教として勤務。また自身も写真活動を定期的にしており、写真展を多数開催。 主に現在は九州の炭鉱地域を中心に街の移り変わりをテーマに作品制作に取り組んでいる。

一般社団法人 日本写真芸術学会会員

【主な写真展】

2021年
「Ikeshima」ピクトリコ ショップ&ギャラリー (東京 両国)
2016年
「IKESHIMA 2014-2016」ピクトリコウォールスペース(東京)
2014年
「IKESHIMA 日本大学芸術学部 卒業制作選抜展」ポートレートギャラリー(東京 四ツ谷)
2012年
「AHI Night」ニコンプラザ銀座 フォトスクエア(東京)
2010年
「building 第83回国画会写真部オープンスペース展 特別賞」新国立美術館(東京)

八木 元春(やぎ もとはる) プロフィール

新潟県長岡市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、2016年より建築専門誌を出版する株式会社新建築社の写真部にてカメラマンとして5年間勤務。新建築社より発行されている「新建築」・「住宅特集」・「J A」・「a + u」・企業別冊・企業本などの掲載用の写真を撮影。
2021年より日本大学芸術学部写真学科の教員となる。大学では 写真の基礎知識、技術、考え方を伝えることに加え、建築、地域性の結びつきから発生する「人の暮らし」を、写真を通して考察する自主制作を行なっている。

一般社団法人日本写真芸術学会会員

八木元春作品
八木元春作品
八木元春作品

KAMABOKO STRUCTURE

1474cm。
この数値は、新潟県のある地域での年間累計降雪量だ。この地域のように冬に積雪の度合いが特に高い地域を「特別豪雪地帯」と呼び、新潟県にはこれにあたる地域が複数点在している。こういった地域には、特徴的な建造物が存在する。「かまぼこ型建造物」もそのひとつだ。新潟県の特に雪深い地域で多く見られ、正式名称は不明。だが「大地の芸術祭」でも多数作品としてモチーフになっているものであり、新潟県の非常にアイコニックな建造物だと言えるだろう。

用途はさまざまで、バス停の待合室、倉庫(車庫)、農機具の収納、簡易的な作業場、作物の干し場、無人販売所、地域消防団の詰め所など。民家の隣、玄関、畑の入り口、または真ん中、畦道付近、峠道(県道・市道、私道)などに設置されており、いずれも暮らしに密着している姿が見受けられる。これらの建造物は共通して半円アーチ形状の屋根型をもち、雪が積もればある程度の降雪があれば自動的に雪が地面に流れ落ちる仕組みとなっている。曲線はアーチ型桟橋のように荷重を分散させる効果があり積雪に対して耐久性の高い構造で、風土に合わせた合理的な形だといえる。

豪雪地帯の真白の風景の中にいくつもこの建造物が現れる違和感と素朴な佇まいに惹かれ、撮影を続けてきた。当たり前のように日常にある建造物を建築写真手法を用い記録することで、よりニュートラルな視点で建築的価値を確認することができたように思う。「かまぼこ型建造物」の独特のフォルムが持つ視覚的な美しさは、この建造物の機能美そのものである。そしてその機能美は、この地域の風土を明確に表しているといえる。この建造物を追い、何度も撮影を繰り返す中で、自身のルーツであるこの地域の過酷さをあらためて再認識させられる。